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深層・真相:新型インフルエンザ 急がれる医療体制の整備 /熊本

 ◇「県内死者1万人」の推計も

 新型インフルエンザに関するニュースが目につく。仮に大流行すれば、人口の25%が感染し、最悪で全国の2500万人が医療機関にかかって64万人が死亡するという国の推計もある。発生に備えた県内の医療体制の整備はどこまで進んでいるのだろうか。【西貴晴】

 新型インフルエンザ発生後、最初に取られる医療面での対策は患者の隔離だ。県によると、11カ所の保健所に「発熱相談センター」を設け、そこでの電話相談に基づき、10カ所の感染症指定医療機関(発熱外来)を受診してもらう。これらの病院にはウイルスが外に出ないよう室内の気圧を下げた陰圧病棟が計48床備えられ、検査結果が陽性と分かれば入院を勧告して患者拡大の防止を図る。

 問題は「パンデミック」と呼ばれる大流行状態になった場合だ。国の想定ではピーク時の入院患者数は全国で最大10万1000人、県内で1480人。一般病院の受け入れが対策の要だが、受け入れ側にとって一般の入院患者を他の病院や病室に移す必要があるし、そもそも何人が入院することになるのかはっきりしない。保健所が病院に受け入れ協力を呼びかけているのが現状で、どのくらいの受け入れが可能になるかは不明だ。

 病院が重症患者でいっぱいになった場合は公共施設の利用も想定されるが、体制づくりはこれから。医師や看護士など医療従事者への感染を防ぐため、県は40医療機関を選んでマスクや手袋など感染防護具購入への補助を決めたが、残る大半の病院は自ら確保する必要がある。各保健所は医療機関向けの研修会を開くなどして周知を図っているが、全体として備えが進んでいるとはいえそうにない。

 ワクチン開発までの治療薬はウイルス増殖を抑える「タミフル」だ。県は国の目標に基づき15万4000人分の備蓄を終えており、市場に出回っている量と合わせてしのぎたい考えだ。

 国の推計は米国疾病予防管理センター(CDC)のモデルを基にワクチンや薬の効果、衛生面の対策などを除いて算出したものだ。県によると、県内の死亡者は1万人に上る。推計を現実のものにしないためにも医療体制の整備が急がれる。

 ◇新型インフルエンザに詳しい岳中耐夫(たけなかしのぶ)・熊本市民病院副院長の話

 国内で1人の患者が出れば、あっという間に各地の病院は患者であふれるといわれている。従来のインフルエンザでは乳幼児や高齢者が重症化するとされたが、免疫系の過剰反応によって若い世代も安心とはいえない。

 指定医療機関以外の受け入れに向けた対策を練っているが、病院ごとに事情があるし「海外での話だろう」という雰囲気もある。治療の優先度を見分ける「トリアージ」が大切になるが、専門医は県内に10人前後で、十分とはいえない。医療現場の対応を早急に詰める必要があるだろう。

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 ■ことば

 ◇新型インフルエンザ

 動物、中でも鳥類のインフルエンザウイルスが人の体内で突然変異して出現する恐れがある。誰も免疫を持っていないため、発生した場合は急速に拡大するといわれる。スペインインフルエンザ(1918年)やアジアインフルエンザ(1957年)もその一種。

毎日新聞 2008年12月5日 地方版

 
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