北秋田市の公立米内沢総合病院(高田五郎院長)を運営する北秋田市上小阿仁村病院組合(管理者、岸部陞(すすむ)・北秋田市長)を存続させるか、解散するか。組合を構成する北秋田市と上小阿仁村の意見が真っ向から対立している。多額の赤字でこれ以上の財政支援は耐えられないが、解散に伴う経費を出す余裕もないという深刻な事態。医療機関の危機をどう軟着陸させるのか、両市村の12月議会から目を離せない状況だ。【村川幸夫】
◆再三の要請
「組合を離脱したい」「組合を存続するという北秋田市側の考えには同意できない」--。上小阿仁村はこれまで、北秋田市に対して再三要請してきた。
同病院はかつて17人の常勤医師がいたが、現在は6人。252床のうち稼働は125床と半分に満たない。今年度の病院の赤字見込み額は2億7100万円に上り、当初予定より3000万円増えた。小林宏晨村長は膨らむ負担金繰り出しが「村財政の限界を超えている」と訴えてきた。
ただ解散には、両市村議会で関連議案の議決が必要。3月には小林村長が「北秋田市議会の合意が得られない」として同月末での離脱を見送った経緯がある。
◆割れる意見
4町が合併して北秋田市が発足する前の04年11月2日に旧4町と上小阿仁村の間で交わされた「合併に伴う一部事務組合に関する合意書」では、組合の継続期間を09年3月末までとしている。
北秋田市には09年10月、北秋田市民統合病院が開業する。同市側は市民病院を急性期、米内沢病院は慢性期の診療にすみ分けしたい意向だ。
11月上旬にあった北秋田市議会の全員協議会では「組合は解散し、すっきりと市立化すべきだ」と容認論が出る一方、「地域の医療問題を考えれば解散はマイナス」と難色を示す声もあった。
ところがここに来て、従来の論議とは別の課題が浮上してきた。
◆改善策裏目に
病院組合は収支改善策として、病院職員の減少を柱とした合理化を進めてきた。その結果、07年4月以降に50人が退職。職員数は約3分の2になった。
退職者には、すでに県市町村総合事務組合(秋田市)から9億4000万円の退職金が支払われた。同組合は24市町村と一部事務組合(消防団など)の計41団体で構成。退職金手当は各団体が積み立てた資金から出す仕組みとなっている。
今回の大量退職によって支払額は病院組合の積立金を大幅に上回り、事務組合は両市村に対し、もし病院組合を解散するなら不足分7億7900万円(北秋田市7億2400万円、村が5500万円)の「清算金」を払うよう求めた。
◆苦渋の選択
自治体にとって、苦しい台所事情の中で多額の資金を一度に準備するのは困難。組合管理者である北秋田市の岸部市長は市議会全員協議会で「これ以上の財政負担はできない。(病院組合を)継続したい」と表明した。同市は組合解散の関連議案を9日からの12月定例会に提出せず組合を継続させる方針だ。
これに対し早期解散を目指す上小阿仁村は、一時的な負担を覚悟のうえで16日からの村議会に関連議案を出す意向。双方の溝は容易には埋まりそうにない。
毎日新聞 2008年12月5日 地方版