第162話で「避妊知識実力テスト」にご回答くださいと求めておきながら、以降正解を示す機会がなかったために読者から「いつ回答してくれるの?」と催促されました。ということで今回はテストの解説をさせていただくこととしましょう。
第162話では以下の20問を用意したわけですが、正解はすべて×。
1.月経中はセックスしても絶対妊娠しない:月経がはじまってから4日目までは妊娠することはありませんが、月経がそれ以上続いたらどうでしょうか。排卵周辺期に経験することのある中間期出血と月経を区別できますか?
2.15歳以下の男のコには、まだ妊娠させる能力がない:射精し、その精液中に妊娠させる精子が存在する男性では年齢が何歳であろうとも妊娠させる能力が備わっています。
3.ペッサリーとは、男性のペニスにつける避妊具である:ペッサリーとは女性の腟内に挿入し子宮の入口に蓋をするような用具です。性交前に挿入し性交後8時間以上経過した段階で抜去します。殺精子剤と併用することで避妊効果を高めます。
4.射精の瞬間、男のコが息を止めていれば、精子は酸欠で死んでしまうので、安心である:医学的に何ら根拠がありません。いわばアホらしい質問でした。
5.女性が上の体位なら、精液が流れ出るのでまず妊娠しない:妊娠しやすい時期になると子宮の入口からは頸管(けいかん)粘液が分泌されます。体位がどうであろうと、射精された精液中の精子はこの粘液中に入り込み子宮から卵管を目指して動き出します。
6.セックスのあと、コーラや炭酸ジュースで勢いよく洗うと、妊娠しない:頸管粘液中に入り込んだ精子をコーラや炭酸ジュースで洗い流すことはできません。不潔になるだけです。
7.妊娠したくないと真剣に思っていれば妊娠することはない:よくもこんなアホらしい質問をしたものです。ごめんなさい。
8.月経不順なら、めったに排卵がないから、避妊の必要がない:めったにない排卵が起こったときにはどうしますか?月経が不順な方こそ望まない妊娠を回避することが難しいと思って下さい。
9.オギノ学説とは「月経の前後1週間は妊娠しない」というもの:オギノ学説、正しくは荻野学説と書きます。荻野久作博士が明らかにしたもので、「排卵は次回月経の12から16日の間に起こる」としています。月経が来て初めて妊娠が否定されるわけですから、月経の開始から妊娠の危険な時期を予想することは困難です。
10.ピルは医師の処方せんがなくても薬局で買うことができる:ピルを処方する際大切なことは、使用できない女性を見極めるための問診と血圧測定が必須です。そのために、医療機関での受診を避けることはできません。処方せんを持って薬局にピルを買いに行くことはありますが。
11.女子中学生が妊娠した例は日本ではまだない:2007年度の中絶統計によれば15歳未満の中絶件数が345件報告されています。「排卵は月経の前に起こる」という荻野学説からすれば初経を経験しないままの妊娠も理論上はあり得るということです。
12.精子は酸性に弱いので、コンドームがなければ、レモンの輪切りを腟に入れて避妊しておくとよい:腟内のpHは3.8~4.5。pH7が中性、それ以上がアルカリ性、それ以下が酸性となっていますから腟内は酸性になっていることになります。レモンのpHは2程度。とはいえ、レモンでどうこうできるわけではありません。
13.コンドームは、彼が2枚重ねてつけると、破れにくいので安心である:コンドームは2枚重ねするとむしろ破れやすくなります。ご注意あれ!
14.腟外射精は、手軽で確実な避妊法なので、男のコはぜひマスターしておきたい:腟外射精の失敗はペニスを抜去するタイミングではなく、今回の性交前にいつ射精したかが深く関係しています。ガマン汁から妊娠に至ることもあると心得て下さい。
15.IUD(子宮内に入れる避妊具)は若い女性ならだれでも使えるが、高価なので人気がない:最近のIUDは小型化し挿入しやすいような改善が図られているとはいえ、使用に際しては妊娠経験があること、できれば出産経験があることが望ましいとされています。避妊法選択にかかる経費は妊娠したときの中絶費用などを考慮した場合、1年単位で一番安いのが低用量ピル、5年でみますと銅付加IUDです。
16.セックスのあと腟をビデで洗う洗浄法は、5分以内なら効果十分:子宮頸管粘液中に入り込んだ精子をビデで洗い流すことはできません。ビデは外性器を洗うだけの用具とお考えください。
17.射精を繰り返すと、精子の数が激減するので避妊の必要はない:妊娠を可能にする精液基準がWHOで定義されています。精液2~3cc、1cc中2000万以上の精子がある、運動率50%以上、奇形率50%以下となっています。射精が繰り返されると確かに精液量が減少するとはいえ妊娠の危険性が否定されるわけではありません。
18.コンドームは射精の直前につければよい:とんでもございません。性的興奮が高まると尿道からクーパー腺液を含むいわゆるガマン汁が出てくるのをご存じでしょうか。その中に精子が含まれている危険性が高いことから、射精直前にコンドームを付ければ安心というわけにはいきません。性感染症予防効果を期待することできません。「勃(た)ったら付けようコンドーム、出したらすぐはずそうコンドーム」を常に心掛けてください。
19.殺精子剤の錠剤は、セックスの前に女のコが飲む薬:殺精子剤を口に含んではいけません。有害だから危険とは申しませんが、泡立ち・熱感という不快な体験をすることになるでしょう。殺精子剤は性交の1時間ほど前に腟内に挿入するものです。2度、3度と性交が繰り返される場合にはその都度1個ずつ追加して下さい。ただし、殺精子剤単独では性感染症予防はできません。
20.基礎体温を計ってみて、それが低い間は妊娠しない:基礎体温を測定することで避妊を可能にする条件は排卵が確実に起こった結果として体温が上昇したことを確認できた数日後からです。残念ながら見た目だけでそれを判断することはできません。精子の生存期間を考えればむしろ体温の低い時期の方が妊娠の危険性が高いと考えてください。
2008年12月4日