Q お医者さんが足りないって本当ですか?=横浜市 M・Iさん(高2)
A 本当です。閉鎖される病院も出ています<答える人:稲葉康生(毎日新聞論説委員)>
先月、東京都内の妊婦が、都立墨東病院など八つの病院に受け入れを断られ、脳出血で亡くなりました。連日大きく報道されたので知っている人も多いと思います。当時、墨東病院には当直の産婦人科医師が1人しかおらず、「対応が難しい」と診察を断りました。女性はその後も別の病院に次々に受け入れを断られ、結局、墨東病院で手術をし、赤ちゃんは無事生まれましたが、亡くなりました。
墨東病院は、危険性の高い妊婦と赤ちゃんのトラブルに24時間対応する、東京都の「総合周産期母子医療センター」に指定されていました。ところが、産科医が辞めて、穴埋めができていない状態でした。その日は土曜日で、本来なら2人の当直勤務が望ましいとされていたのに、医師は1人しかいなかったのです。
実は、医師不足は産科だけではありません。小児科や麻酔科なども医師が足りないため、全国各地で病院が閉鎖されたり、診療科が廃止・縮小されています。
なぜ医師が足りないのでしょうか。背景には(1)国が、医師の数を抑える方針を長い間変えなかった(2)2004年から始まった新人医師の臨床研修制度で、大学病院が人手不足になり、これまで医師を送り出していた病院から医師を引き揚げた(3)病院の勤務医の仕事がきつく、待遇がよくない(4)女性医師が結婚や子育てで辞めてしまう(5)医療事故で訴えられ、裁判になるケースが増えている--など、複雑な理由が絡み合っています。
日本の医師の数は、人口1000人当たり2.1人(06年)です。ドイツ(3.5人)やアメリカ(2.4人)などと比べて少ないですね。このため、政府は大学の医学部の定員を増やしたり、医師が辞めるのを防ぐための対応策などをまとめました。早く実行し、私たちが安心して暮らせるよう手を打ってもらいたいですね。
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