◎苦境の北陸建設業界 破たん連鎖の危険性がある
北陸の建設業界は今、底の見えぬ不況の中にある。真柄建設(金沢市)、林建設工業(
富山市)などに続いて、奥能登最大手の宮地組(輪島市)も民事再生を申請し、経営破たんした。官公庁発注工事が大幅に減ったうえに、建設資材の高騰が経営に追い打ちをかけた格好である。
資金需要の高まる年末を迎え、破たんの連鎖が広がる危険性がある。建設不況は、北陸
に限ったことではないにせよ、まさに業界全体が正念場を迎えたといえるだろう。特に能登地区では、建設業は地域経済を支える主要な柱の一つであると同時に、雇用の受け皿にもなっている。建設業界は地元金融機関と二人三脚で、この苦境を乗り切ってほしい。
業界内からは入札制度に対する不満の声も漏れてくる。仕事が減ったうえに、利益も削
られるのはつらかろうが、入札制度改革の流れはだれにも止められない。むしろ公正な入札制度に積極的に協力する方向で県民の理解を得て、行政支援を手厚くしてもらう道を探ってはどうか。
建設業は県民の生活になくてはならない基盤整備を担っている。それにもかかわらず、
マイナス・イメージが抜けないのは、談合やダンピングといった根深い問題を抱えているからだ。ゼネコンを頂点とするピラミッド構造の下、仕事を分け合っていられた時代は、業界の付き合いさえしておけば食べていけたのかもしれないが、公共事業が減る一方の時代になった後も、業界全体が古い体質を引きずったまま「ゆでガエル」の状況に追い込まれてしまった。
世界で最も競争力のある国内の自動車業界ですら、減産や雇用調整を余儀なくされるな
か、建設業界が厳しい立場に立たされたのは、必然ともいえるだろう。受注獲得競争にしのぎを削る一方で、肝心の経営力を磨く努力を怠ってきたツケもある。甘い経営計画、どんぶり勘定の資金計画、マネジメント能力の不足といった問題から見えてくるのは、プロになりきれない経営者の姿だ。農業や環境分野などへの新規参入や経営の多角化などを含めて、生き残り策を今一度、真剣に探ってほしい。
◎相続税見直し 世界的な流れは「廃止」
自民党税制調査会の二〇〇九年度税制改正論議と税制の中期プログラム策定で、相続税
の見直しが論点の一つになっている。課税方式の変更は来年度見送りの方向にあるが、年末までにまとめる予定の中期プログラムでは、相続税の課税ベース拡大も課題になっている。格差是正のため相続税の課税強化を求める声を受けたものだ。しかし、世界的には逆に、事業承継の円滑化や投資の呼び込みなどを理由に相続税の廃止が大きな流れであることを認識してもらいたい。
政府や自民税調で検討されている相続税の新課税方式は、遺産取得課税方式と言われる
。現行の法定相続分課税方式は、法定通りに遺産分割がなされたとみなして税額を計算しているが、これを実際の遺産受取額に応じて課税しようというのである。遺産分割の実態に即した方式であり一理あるが、相続人によっては増税になる可能性があり、現在の景気状況から、とりあえず来年度導入は見送りの見通しという。それはよしとしても、相続税の在り方でいま論じるべきことは、課税の強化や課税方法の変更であろうか。
諸外国の状況をみると、カナダやオーストラリア、スウェーデンなど相続税を廃止した
国が多い。米国も徐々に軽減して二〇一〇年には相続税をゼロにすることが決まっている。政権交代で見直しの可能性はあるが、国際的なすう勢は相続税の縮小、廃止である。
相続税の根拠として富の集中を防ぎ、再配分で社会の公平性を保つことが挙げられるが
、根底には相続遺産を不労所得のようにみなし、高い税金をかけるのは当たり前といった考え方がある。が、廃止した国々では、私有財産に国家が関与し、奪うようなことをよしとしない思想がある。
日本の相続税の最高税率は50%まで下げられたが、国際的にはなお最も高い水準にあ
る。軽減措置が取られたとはいえ、中小企業の事業承継の障害になるケースが多い。税制の中期プログラムづくりでは、相続税の縮小、廃止という国際的な流れを念頭に本質的な議論を行ってもらいたい。