当時中学3年生だった少女(16)に売春させたとして、児童福祉法違反と売春防止法違反の罪に問われた和歌山市の母親(36)の初公判が4日、和歌山家裁(杉村鎮右裁判官)であり、母親は「(間違いは)ありません」と起訴事実を認めた。検察側は「子どもの人格を無視、蹂躙(じゅうりん)した卑劣で悪質な犯行」として、懲役5年と罰金10万円を求刑、即日結審した。判決は25日に言い渡される。少女の義父(47)も母親と共謀したとして同じ罪で起訴されており、18日に初公判がある。
検察側は論告で、「養育する立場であるのに、少女に対して怒鳴ったり、暴力を振るったりした」として、「少女が自分たちを恐れていることを利用した。子どもとしてでなく、ひとつの収入源として見ていた」などと厳しく非難。少女が売春で得た金を義父とともにパチンコなどの遊興費に使っていたと指摘し、「衝撃的な事実が社会に与える影響は大きい」と主張した。
さらに、07年5月ごろから08年3月ごろまで、少女に常習的に売春させ、それで得た利益は100万円を超える、と指摘。少女は誰にも打ち明けられず、ひとりで悲しみを抱える生活をしていたとして、「ママやお父ちゃんのせいで普通の中学生活を送れなかった。自分の体は汚れてしまった。親とはいえ許せない。一緒に住みたくない」などという少女の言葉を示し、健全な育成に与えた影響は大きい、とした。
母親は覚せい剤取締法違反(使用)の罪で、11月6日に和歌山地裁で懲役1年6カ月、執行猶予3年の判決を受けている。検察側に「(少女の売春で得た金で)覚せい剤を買ったのでは」と問われ、「ありません」と否定した。
母親の弁護人によると、母親は少女の親権を失ったという。弁護側は最終弁論で「正直に話し、罪も認めている」と主張し、執行猶予付きの判決を求めた。(宮崎亮)
■「私もそう育てられた」
「もっともっと努力して、まっとうな母親になりたい。本当にすみませんでした」。和歌山家裁の法廷で、母親は涙を流し声を震わせた。なお「(少女の義父の)夫とやり直したい」とする母親に対し、杉村裁判官が声をあららげ、「少女がどんな気持ちでいたと思うのか。その言葉を聞いて、少女が新しい一歩を踏み出せると思うのか」と厳しく問い詰めた時だった。