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【社説】

集束爆弾禁止 この流れ定着させたい

2008年12月5日

 市民を無差別に殺傷するクラスター(集束)爆弾禁止条約の署名式が開かれた。各国の非政府組織(NGO)など、国際世論が結集した成果だ。この流れを定着させ、完全廃棄を実現したい。

 署名式はノルウェーの首都オスロで行われ、オブザーバーを含め百十四カ国の政府代表が参加し、日本をはじめ九十二カ国が署名した。最終的には、百カ国以上が加盟すると予想される。

 今回の条約はすべての締約国に対して、クラスター爆弾の使用、製造、開発、貯蔵、保有、移転を禁止している。従来型のクラスター爆弾は全面禁止となり、条約の発効後、八年以内にすべてを廃棄するよう義務付けている。

 ただ、禁止条約は子爆弾が十個未満で、攻撃対象を識別し自己破壊装置のある高性能の新型爆弾を例外として認めており、この点は今後の検討課題であろう。

 レバノンやアフガニスタン、セルビア、最近のグルジアなど紛争地域で、クラスター爆弾は戦闘が終わっても不発弾として残り、いかに市民や子供たちに多大な犠牲を強いてきたことか。あらためて思い起こしてみよう。

 禁止条約をめぐって政府間交渉も行われたが、進展がみられなかった。痛ましい種々の報告に憤激した日本など各国NGOは、積極的に行動して各国政府を動かし、ことし五月に条約合意にこぎつけた。今回の条約調印は、対人地雷禁止条約に次ぐ、強い国際世論と国際的な努力の結実として、高く評価する。

 日本政府は、現在、自衛隊が保有するクラスター爆弾を全廃するとともに、新型爆弾についても導入しない方針を決定した。断固として、この方針を貫き通してもらいたい。

 多数国の禁止条約署名があっても、手放しでは喜べない。主要保有国の米中ロのほかに、イスラエルやインドなど緊張地域の国々が参加していないからだ。河村建夫官房長官は、米中ロなどに条約加盟を働きかけると表明した。それを果敢に実行してほしい。

 米国のオバマ次期大統領は、核軍縮や集束爆弾禁止に深い理解を示してきたと伝えられる。この領域での「変革」を促す決定を下すよう期待する。

 米中ロは国連安保理の常任理事国として、国際平和と安全の維持に責任がある。市民の犠牲の上に立った平和はあり得ない。禁止条約への速やかな署名が必要だ。

 

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