石油元売りの新日本石油と新日鉱ホールディングスが来秋、経営統合する。石油精製などの下流部門にとどまらず油田開発にも果敢に挑み、新エネルギーも含めた資源の安定確保に期待したい。
新日石は元売りの最大手、新日鉱は六位。国内元売り同士の大型再編は一九九九年に日本石油と三菱石油が合併し、新日石が誕生して以来十年ぶりだ。新会社の売上高は十三兆円で業界では断トツ、国内ガソリン市場の占有率も33%に達する。
統合を決断させたのはガソリン消費などの大幅な減退だった。ことし上半期の世界のガソリン需要は前年並みの水準だったが、国内では2%以上も減少した。原油価格は今夏をピークに三分の一に値下がりし、ガソリンも下がってきたのに需要回復の動きは鈍い。
若者の車離れなどによって自動車保有台数が減少、金融危機を契機とした景気減速が追い打ちをかけている。新日石の来年三月期決算は赤字に転落する見通しだ。
収益力を維持するには経営規模を拡大し、製油所や給油所など余剰設備の統廃合が欠かせない。
新日鉱傘下の日鉱金属は銅精錬で国内トップ、海外でも銅鉱山の開発に乗り出している。新日石はベトナム沖で油田を開発し、三洋電機との合弁で水素エネルギーを使った燃料電池や太陽電池など、新エネルギー事業も始めている。
新会社の売上高は世界八位、上流の油田開発部門から下流の精製・販売部門まで一貫体制も整った。新日石の西尾進路社長は、それを意識してか「メジャー(国際石油資本)のような収益率の高い骨太の会社にしたい」と語っている。ここからは「攻め」の経営を見守っていきたい。
米エクソンモービルなどメジャーは利益の半分以上が油田開発だ。利幅が薄い下流部門頼みの日本の二十倍近くも稼ぎ出している。資金力に技術力、それに失敗のリスクも覚悟して開発に挑むので、巨額の利益が転がり込む。
政府の新国家エネルギー戦略は二〇三〇年までに原油需要の40%以上を自主開発で賄うよう目標を掲げた。
新会社による油田開発や油田買収に期待を寄せる日本のエネルギー関係者は少なくない。
新会社は経営統合の効果を一千億円以上と見込んでいる。消費者が期待するガソリンや灯油の価格安定も忘れないでほしい。
この記事を印刷する