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【主張】クラスター禁止 抑止力維持に万全を期せ
クラスター(集束)爆弾使用などの禁止を定めた「クラスター弾に関する条約(オスロ条約)」の署名式がノルウェーの首都オスロで行われ、日英独仏など約100カ国が署名した。
この兵器には多くの小さな子爆弾が内包され、空中で広範囲に飛散する。より大きな損害を与える一方、戦闘終了後、不発弾によって民間人が死傷する事故が後を絶たない。この爆弾の廃絶を願わない人はいないだろう。
しかし、多くの生命がかかわる国家の安全保障という問題が一方に厳然と存在していることも見据えるべきだ。日本の平和と安全がこの条約によって、いかなる影響を受けるのか。実効性ある条約なのか。こうした論点はほとんど詰められぬまま、理想論が先行して、署名という結論が導き出されたことに危惧(きぐ)せざるを得ない。
自衛隊は現在、戦闘機から投下するなど4種類のクラスター弾を保有している。海岸線が長く、離島の多い日本にとって敵の上陸を食い止める有力な手段はほかにない。しかも中国、ロシア、韓国、北朝鮮などの周辺国、それに米国も今回の条約に参加していない。冷戦が色濃く残る北東アジアで日本だけが有効な兵器を持たないという構図である。
非参加国が持つクラスター弾は世界の保有数の7割以上を占めるようだ。対人地雷全面禁止条約の発効後、米国などの非署名国も対人地雷を実戦で使わなくなったことから、クラスター弾も使えなくなると論じられているが、禁止の実効性は担保されていない。
米中露などは、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みによるクラスター弾規制を進めているが、より厳しいオスロ条約によって、効果的規制はかえって困難になった一面もある。
日本は条約発効後、8年以内の廃棄を義務付けられる。廃棄費用は200億円以上だ。条約は不発弾になりにくい最新型の保有を認めているが、日本は導入しないとしている。代替兵器の開発・配備には10年以上かかる。防衛の空白にならないか。
懸念されるのは日米同盟への影響だ。加盟国は非加盟国との「軍事協力・作戦に関与できる」としているが、在日米軍にクラスター弾の使用を要請することは認められないという。抑止力が損なわれる事態にならないよう、政府は万全を期してもらいたい。