国内で石油元売り首位の新日本石油と、同6位の新日鉱ホールディングスが経営統合を決めた。国内のガソリン需要減少が再編の引き金になったが、両社が目指すのは第1に油田開発を進めて原油という資源の調達力を高めることだ。
第2に新日石が始めている太陽光発電関連事業など、地球温暖化防止に役立つビジネスの強化を狙っている。経営統合を原油の安定的な確保や、二酸化炭素(CO2)の排出量削減につなげてほしい。そうなれば日本経済にもプラスといえよう。
両社の売上高を合計すると、2008年度の見通しで13兆円強と世界の上位10社以内に入る。だが前期の純利益は世界首位の米エクソンモービルの7%弱にすぎない。収益力が見劣りするのは、油田開発などの上流部門が小さいことが一因だ。そこで経営統合で資金調達力を高め、油田開発を強化する方針である。
米国の原油先物価格は7月に1バレル147ドル台の最高値を付けた後に急落、金融危機の影響もあって現在は約3分の1の水準になった。しかし長い目で見れば資源確保の重要性は変わっていない。国際エネルギー機関(IEA)は原油価格が再び上昇し、22年後の30年に200ドルを超すと予測している。新興国の需要増に、油田開発が追いつけないとみているからだ。
太陽光発電や燃料電池など、石油に代わるエネルギー事業の強化も重要だ。今年は京都議定書の第1約束期間に入り、先進国のCO2削減に拍車がかかっている。石油に次ぐエネルギーの柱をつくることが業界共通の課題で、昭和シェル石油も太陽光発電に1000億円超を投じる。
油田開発などに投じる資金を生み出すには、石油精製設備などを集約し、事業の採算を改善する必要がある。両社では10年4月に事業別の再編を終え、それから2年以内に精製能力を2割強減らす方針だ。ガソリンスタンドの統合なども進め、最終的に年1000億円以上のコスト削減を目指している。
石油元売り業界には大手だけで6社あり、国内のガソリン需要が減少するなかで、各社とも事業の構造転換を迫られている。今後も再編の余地がありそうだ。