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社説:石油会社統合 和製メジャーにつながるか

 新日本石油と新日鉱ホールディングスが経営統合すると発表した。新日石は石油元売り国内最大手で、新日鉱傘下のジャパンエナジーは同6位に位置している。統合後の年間売上高は13兆円強となり、売上高で世界の上位に入る石油会社が誕生することになる。

 両社は来年10月に共同持ち株会社を設立し、その傘下に両社が入ったうえで、10年4月には石油精製・販売、油田開発、金属の3事業会社を設け、双方の事業を分野別に完全統合するという。

 高騰を続けていた石油価格は、世界経済の急速な下降を背景に、急落している。景気の悪化はさらに進み、石油の需要減はさらに続くとみられる。そうした状況下で、経営を効率化し、体力を強化するため、両社は経営統合を決めた。

 国内の石油産業は、過剰設備を抱え、それを背景に、ガソリンスタンド間での過当競争が繰り返されてきた。その結果、石油会社の収益力は低く、下流部門で十分な利益が得られないため、油田開発など上流部門に十分な投資ができないという状況が続いてきた。

 両社の統合により、日本の石油産業の構造転換が促されることを期待したい。

 統合後の両社の売上高は世界8位となる。しかし、利益ではメジャーと呼ばれる国際石油資本にはるかに及ばない。

 収益力を強化するには、統合メリットを生かして効率化を推進する一方、ガソリンなど石油製品の販売で、価格形成の主導権を握ることもポイントとなる。

 新日石が「ENEOS」、ジャパンエナジーが「JOMO」ブランドで展開しているガソリンスタンドの数は約1万3000にのぼる。ガソリン販売の国内シェアは36%と、スタンド数、販売シェアとも2位のエクソンモービルの倍近い規模となる。

 こうした規模のメリットを生かし、不採算の製油所やガソリンスタンド網の統廃合を進め、価格交渉力を強化する一方で、海外の資源開発事業を強化することをめざしている。

 国内の石油会社は、物流や精製で提携しているが、新日石と新日鉱の統合により、新たな再編の動きが出てくる可能性もある。

 石油産業を取り巻く環境は、景気後退以外にも、少子化と若者の車離れ、さらに温室効果ガス排出抑制という課題もあり、厳しい。

 しかし、石油は重要な資源であることに変わりはない。資源ナショナリズムが高まる中で、日本への石油の安定的な供給を確保しなければならない。燃料電池など新エネルギー技術の開発も含め、経営基盤が強固で、グローバルに活躍できる石油会社が必要だ。

 両社の統合が、「和製メジャー」の誕生につながるのかは不明だが、それに向けた積極的な動きとして、とらえたい。

毎日新聞 2008年12月5日 東京朝刊

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