大太刀
日本は古来より武を尊ぶ国であり,
当然さまざまな種類の武具が発達しました。
同じ日本刀でも多種多様な分類ができますが,
今回は「長大な刀」というジャンルで紹介します。
日本の長大な刀には,大太刀(Ohdachi),長巻(Nagamaki)などがあります。
大太刀とは野太刀(Nodachi),斬馬刀(Zambatoh)ともいい,
刀身が3尺(約90.9cm)を超える刀のことです。
▲ 大太刀
■ 現存する大太刀
ちなみにこの大太刀や長巻,破壊力が大きい武器ですので,
太平の江戸時代に表立って所持することが禁止されました。
そのため,磨上げ(茎をつめること),短く加工されてしまい,
普通の打刀や脇差,短刀に改造されて,あまり残っていません。
(「長巻直し」という改造された日本刀は結構あります)
まあ,それでも現物がかなり残っているのが日本という国ですw
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重要文化財 山金造波文蛭巻大太刀(号: 祢々切丸) 14世紀?
刃長: 7尺1寸2分(約215.8cm) 全長: 1丈1尺3寸2分(約340cm)
「祢々」とは日光山中のねゝが沢に棲んでいた化け物で,
この太刀は自然に鞘から抜けてその「祢々」を追い回し,斬り殺したという。
▲ 国宝 大太刀 野太刀拵 長船倫光作 1366年
(銘) 備前長船倫光 貞治五年二月日
刃長: 4尺1寸6分(124.5cm) 重さ: 2.5kg
野太刀または背負太刀と呼ばれるもの。拵は野太刀拵で,太刀と同時代の希少な資料。
▲ 重要文化財 大太刀 附・革鐔 長船家盛作 1415年
(銘) (表)南無正八幡大菩薩 右惠門焏家盛
(裏)南無淹摩利支天源定重 應永廿二年十二月日
刃長: 7尺2寸8分5厘(220.4cm)
越後(現・新潟県)夏戸城主・志田三郎定重が,備前長船の刀工・家盛に鍛えさせて弥彦神社に奉納した。
重要文化財の湾刀としては日本最大の刀で,練革13枚重ねの丸鍔や鉄はばきなども現存。
▲ 大太刀(吉備津丸) 長船法光作 1447年
(銘) 備州長船法光生年三十三/文安二二年八月日/薬師寺弥五郎久用生年廿一歳
刃長: 7尺4寸8分(227cm) 全長: 1丈2尺4寸6分(378cm)
在地武士の薬師寺弥五郎久用により,吉備津神社に奉納されたもの。
刀身にしっかりと焼き入れが施されていることや,茎が刀身に合わせて長くつくられていることから,実戦刀と考えられている。
▲ 大太刀 高力長吉作 1661年
(銘) 奉納三嶋大明神御寶前/三州高力住長吉作
(刀身銘) 高力左近大夫平朝臣高長敬白/寛文元年丑年十一月吉日
刃長: 114.3㎝ 全長161.5㎝
島原藩主・高力高長(三河出身)の奉納。
高力氏の郷里,三河国高力郷(愛知県幸田町)の刀工・高力長吉が作刀したもの。
高長はこうした大太刀を全国の有力神社,ゆかりの深い神社や寺院に多く奉納し,
現在は23口の存在が確認されている。
▲ 大太刀 拵共 三家正吉作 1843年
(銘) 奉納伊夜比古大明神之広前宝祚無窮親一王及文武臣僚天下万姓長久安寧
天保十四年歳次癸卯二月日頸城郡高一田住人三家正吉作之
刃長: 7尺4寸(224cm) 全長: 3尺1寸(93cm)
越後(現・新潟県)高田の刀工・三家正吉が天保14年(1843)に鍛えて奉納したもの。
鞘巻太刀と称する拵の全部も,越後の工匠の製作。
▲ 大太刀(伝: 太郎太刀) 千代鶴作 16世紀?
刃長: 7尺3寸(約221cm) 重さ4.5kg
朝倉氏の猛将・真柄十郎左衛門直隆が愛用した大太刀と伝わる。
1570年の姉川の戦いに従軍。徳川家の猛将・本多平八郎忠勝とも一騎討ちを演じ苦戦させた。
しかし敗走する味方のしんがりを勤める中,弟・息子ともども匂坂兄弟ら三人がかりで討ち取られた。
ちなみにこの時真柄直隆を討ち取るのに使われた刀は「関の孫六(Magoroku)」の名刀で,
「真柄切兼元」として現在も伝わっている。
(=´ω`=)y─┛~~