ロケスタ社長日記

前回「警察からの捜査依頼が来た時マニュアル」を書いて「これはみんな便利だろうな」と思っていたのですが、思いの外、関係ない人が多いというか、「こんな知識、必要ないよ！」みたいな反応がありました。

よくよく考えたら、「自分が誹謗中傷を書かれるリスク」というほうが遙かに高いですよね。というわけで、誹謗中傷を掲示板で書かれた人がどういう対応をとればいいのか、まとめてみました。その第一弾として「掲示板での書き込み者を特定する方法」を書きます。

ちなみにこの対応は、本当に悪質でひどい誹謗中傷を書かれた人にしか使えません。今のネット社会では、少しくらいの批判に反応するのは効率的ではありません。自分の生活や家族、大切な人にまで害を及ぼすような誹謗中傷をされたり脅迫をされた時のみ、このような対応をとるのをオススメします。

掲示板での書き込み者を特定する方法

まず、一番最初に何をやらないといけないかというと「書いた人の発信者情報をゲットする」というところです。それはたいていの場合、IPアドレスです。（mixiなどの会員サイトでは、会員情報を運営者が持っている場合もありますが、今のところ、誹謗中傷を書かれるのは匿名系の掲示板が多いので、それを前提に書いていきます。）

では、発信者のIPアドレスを知るにはどうしたらいいでしょうか？方法は大きく分けて３つあります。

１：掲示板管理者に「出してください」とお願いする
２：警察経由で出してもらう
３：開示請求訴訟をする

下に行くほど敷居が高くなります。詳しく見ていきましょう。

１：掲示板管理者に「出してください」とお願いする

これが基本。とりあえず、その掲示板の管理者にメールをするのが一番簡単。

あまり感情的にならないで依頼をするのが一番スムーズです。「提出しないと訴えますよ」のような脅しは意味がないのでやらないほうがいいですね。相手もけんか腰になってしまったら、無駄なもめ事を増やすだけです。「書いた人を訴えたいので、IPアドレスを提出をお願いいたします。管理者責任を追及するのではなく、発信者を提訴するためのものなので、出していただければあなたに対して面倒はかけさせません」という旨をきちんと伝えるのがよいです。

個人情報なので出せない、という人に対しては、「プロバイダ責任制限法案があるので、明確な理由がある限り、開示者の責任は問われない」ということをしっかりと教えてあげましょう。

開示してくれたら、そのIPアドレスを持って、警察に行くか、裁判所に行くかします。そのフローについては、２、３をごらんください。いったん、掲示板管理者がIPアドレスを出してくれないというフローに基づき、２と３を説明します。

２：警察に相談する

１の対応をしてもIPアドレスを出してもらえなかった場合。その時は警察にいきましょう。

ポイントとしては、書かれた掲示板をプリントアウトし、警察の受付で「掲示板で誹謗中傷を書かれたので、刑事告訴しようと考えています。刑事課までお願いします」と伝えることです。普通にいくと生活安全課などに案内されることが多く、悩み相談を聞くレベルで終わってしまう場合もしばしば。

刑事課にたどり着いたら、誹謗中傷された旨を伝え、プリントアウトした記事を見せ、掲示板管理者の連絡先を教えます。また、警察のほうから、書き込み者のIPアドレスを捜査関係事項照会書を持って開示請求をしてもらうようお願いをします。

多くの掲示板の管理者は、この対応でだいたいIPアドレスを素直に出してくれます。しかし、これでは書いた本人を特定することは出来ません。

次は警察経由で、IPアドレスから割り出したプロバイダに対して、個人情報請求をしてもらいます。IPアドレスだけじゃプロバイダがわからないよ＞＜、と警察が言ってきた場合は、ドメイン/IPアドレス【whois情報検索】を教えてあげましょう。このサイトではIPアドレスからプロバイダがわかります。

刑事告訴する意志がはっきりある場合は、あとは警察が割とがんばってくれます。しかしあまりITに詳しくない警察の方だったり、やる気のない担当者だった場合は捜査が進まない場合もあります。その場合には以下の方法があります。

３：開示請求訴訟をする

掲示板管理者に対して、訴訟を行います。開示請求の訴訟ですね。難しそうですが、実はそんなに大変ではありません。一度、弁護士さんに頼んで、手続きを教えてもらうのがいいでしょう。あとは弁護士をつけずに自分個人で対応できます。

たいていの裁判が、２、３回ほどやり、掲示板管理者がIPアドレスを出す、という和解方法を裁判所から提示して来ますので、それで終わりです。

そして、そのIPアドレスをもって、次はプロバイダにIPアドレスからの個人情報請求訴訟を起こします。その裁判が終われば、書いた人が特定できるので、あとは訴えるなり、和解するなり好きなようにできます。

ただし、これには非常に大きな問題があります。まず、掲示板管理者の個人が特定できない場合。これは訴えることすら出来ないので非常に大変です。一番まともな方法が、サーバ管理会社に対して接続している管理者のIPアドレスを開示してもらい、そこからプロバイダに対して開示請求訴訟を起こし、管理者を特定した上で、管理者に対して発信者のIPアドレス開示をするという方法になります。

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さて、ここまで読んでくださった方はお気づきかもしれませんが「発信者を特定するのは大変」ということです。一番の方法が警察に行くことですが、それがうまくいかなかった場合、個人を特定するのは現在の法律では非常に困難です。

もう一度フローを確認すると

掲示板管理者に対してIPアドレス開示請求訴訟を起こす
↓
プロバイダに対して、そのIPアドレスからの個人情報開示請求訴訟を起こす

という２つの訴訟が存在するということになります。しかもこれは掲示板管理者の連絡先がわかっている場合のみで、もしもそれがわからない場合は

サーバに対して管理者のIPアドレスを出してもらう
↓
プロバイダに対して管理者のIPアドレスからの個人情報開示請求訴訟を起こす
↓
掲示板管理者に対してIPアドレス開示請求訴訟を起こす
↓
プロバイダに対して、そのIPアドレスからの個人情報開示請求訴訟を起こす

となります。これにProxyを２，３個かまされていたら、その度に裁判を起こす必要が出てくる可能性があります。しかも、その途中で「ログをすでに廃棄してしまった」と言われれば、そこで追跡が困難になります。

これはもう法律の不備だな、というわけでプロバイダ責任制限法案ができあがったのですが、実際に使われているかというと、そうでもないです。せいぜい、掲示板管理者がIPアドレスを出しやすくなった、というところくらいじゃないでしょうか。

しかも発信者情報のログの取得の義務がプロバイダにはないため、裁判の途中でログをすでに削除されてしまっている可能性もあるわけです。

というわけで、個人を特定するのは大変なのですね。一番簡単な方法が、すごくがんばって、警察に協力してもらう、という戦い方なので、がんばって警察の方に動いてもらいましょう、、、というのが精一杯のアドバイスだったりします。