「ちょっとあなた、それをやりますか!?」
花道を揚々と引き揚げるテレビの中の横綱・朝青龍に向かって、思わず言ってしまった。大相撲春場所(大阪府立体育会館)中日(8日目)は、注目の朝青龍―小結・稀勢の里戦。稀勢の里は、朝青龍が以前から苦手としているガチンコ力士である。前々場所では「けたぐり」という、いわば横綱らしからぬ手合いで稀勢の里を転ばせ、勝った朝青龍の方が非難された因縁の相手だ。 取り組みは、立ち会いから激しいはたき合い。途中、かわされた朝青龍が前のめりになる場面はあったが、すぐに体勢を立て直し、稀勢の里のうしろにつく。そのまま押し出すのかと思えば、なぜか稀勢の里をつり上げて送り投げ。 問題はそのあとである。すでに転がっている稀勢の里を、土に沈めるように、ひざで押っつけたのだ。まるで、ケリである。 「必要以上にダメ押しするんですね、彼は。稀勢の里のうしろを取ったあと、つり上げて何かしようとしたでしょう。因縁の相手で、今日も途中、押されたから『この野郎』と思ったのか。品がないですよ、もう。負けている相手にダメ出しをするのは、『横綱』としてどうよ、と言いたい」 ノンフィクションライターの武田頼政氏は、朝青龍のパフォーマンスを、あきれたようにこう非難する。 「まるでぶつかり稽古(けいこ)の感じです。格上の力士が、格下の力士に胸を貸して土俵際まで押させる。その際、押し切れない相手をわざと転がしたり、ケリを入れたりする。それと同じ行為でした」 因縁の稀勢の里相手に、またもみっともない姿を見せた朝青龍。だが、何はともあれ2敗を堅守して場所を折り返した。明日9日目の相手は関脇・琴奨菊。明徳義塾高校時代の先輩・後輩の間柄だ。朝青龍がまた星を伸ばすのは確実だろう。 一方、これまで全勝リードしていた栃東はこの日、琴欧州との大関対決に寄り倒しで敗れ1敗。ひざのケガへの影響が心配される状態になってしまった。中日を終わって、1敗は栃東と白鵬の2人。明日はその2人の直接対決になる。 武田氏は、この栃東―白鵬戦が後半戦を占うカギになる、と断言する。 「ここで栃東が敗れれば、優勝争いは白鵬と朝青龍になるでしょう。常に稽古不足で場所に臨む朝青龍の場合、後半で調子を上げてくるのはいつものこと。だからこそこれまで、(稽古不足の影響が出る)序盤戦で星を買っていたわけですから。対する栃東は、後半戦も厳しい戦いが続く。前半は肩の力が抜けていて、とても良い取り組みをしていたんですが、ちょっとこれからがつらいですね……」 【関連記事】 ガチンコで春場所初日から大荒れ!疑惑の朝青龍に土<初日> 朝青龍、連敗スタートで「いきなりがけっぷち」<2日目> 朝青龍、気迫の1勝目で立て直しなるか<3日目> 星戻した朝青龍、焦点は中日あたりか<4日目> 安馬になど負けない!朝青龍3勝へ<5日目> 朝青龍4連勝、だが格下相手に不安材料も<6日目> 朝青龍、明日・稀勢の里戦がカギになるか<7日目> 朝青龍、品ないケリでも優勝争いに名乗り<8日目> 「どうやって勝とうかな、っと」朝青龍ゆるい1勝で星伸ばす<9日目> 朝青龍、真剣勝負でまたも勝つ<10日目> 見えてきたストーリー、千秋楽に決定戦か<11日目> 朝青龍、順調に10勝目_明日の波乱はあるか?<12日目> 今夜がヤマ場だ!携帯飛び交う終盤戦の魅力<13日目> ついに追いついた朝青龍、白鵬への流れを止めるのか<14日目> あっけなかった決定戦、「でもこれこそガチンコだったかも」<千秋楽>
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