医師らに理不尽な要求などをする患者「モンスターペイシェント」による医療現場の混乱が全国的に問題となる中、香川県は3日、患者の行動規範を示した手引き「患者が守るべきルールとマナー」の素案を公表した。暴力を振るう迷惑患者らには院外撤去を命じるなど、医療機関の対応を明記したのも特徴。県民に良識ある受診の協力を呼びかけ、適正な医療提供態勢の確保を図る。
香川県内ではこれまで、院内トラブルの対応は各医療機関が行っていたが、県は問題が深刻化している実態を把握。手引きに強制力はないが、県として対策に乗り出す姿勢を打ち出すことが、迷惑行為の抑止につながると判断した。
同日、県庁で開いた医療安全推進協議会(会長・坂東義教県医師会理事)で素案を提示した。
手引きには、▽暴力・暴言をしない▽治療費を支払う▽診療時間内に受診する▽症状を正確に伝える―の4項目を提示。暴力行為などで医師や看護師、他の患者に迷惑をかける患者には、医療機関が警察に通報したり、院外退去を命じることも示している。
協議会には医療関係者や弁護士ら委員8人が出席。委員は、患者の暴力などに悩む医師や看護師が現場を離れている実態を訴え、「行政が動くことで一定の効果が期待できる。医療現場として心強い」と評価。一方で「問題患者に効果があるかは疑問。警察や弁護士との連携強化も必要」との意見もあった。
県医務国保課は「医師らに過度の負担を与える一部患者の行動が医療崩壊の一因にもなる。地域医療を守るため、県民に理解と協力を求めたい」としている。
香川県は今後、パブリックコメントを行い、本年度内に策定。県内の全医療機関に配布し、院内で啓発に活用してもらう。
■モンスターペイシェント 医療従事者に暴言を吐いたり、暴力を振るうほか、理不尽な要求などをする悪質患者の総称。救急車の乱用や医療費を踏み倒すといった行為なども含まれる。特に夜間の救急病院で多く、医療行為が停止するなど深刻な問題も出ている。
香川県内では実態把握が遅れているが、県立中央病院によると、ナースコールに対応した看護師が「遅い」と怒鳴られて顔を殴られたり、診察中に目が合い「にらむな」といすを投げつけられるなど、迷惑行為が頻発。4月以降、強制退去も2件あるという。