対馬市上対馬町比田勝で県離島医療圏組合が運営する上対馬病院が、看護職員不足のため、主に長期療養が必要な入院患者を収容する療養病棟を今月から一時休止した。同病院だけでなく、県内の離島へき地にある病院は同様にスタッフ不足や医師の過重労働が深刻化。現状のままでは医療態勢の悪化につながりかねず、地域住民にも不安の声が広がっている。
上対馬病院の看護職員は11月までは一般病棟(60床)に31人、療養病棟(24床)に15人を配置していた。しかし、一般病棟の5人が出産や病気で長期休暇に入り、夜勤態勢が組めなくなったため、療養病棟のスタッフ10人を一般病棟に回し、療養病棟を休止することを決めたという。
また、今月下旬から来年3月末にかけて6人の看護職員が退職を予定しているが、新年度採用見込みは今のところ2人しかいない。離島の中でも過疎が進んだ地域にある病院での勤務が敬遠されているため、スタッフ不足は深刻化。同病院は近隣の医療機関からの看護職員派遣について協議を始めているという。
対馬市内には県離島医療圏組合運営の公立総合病院が上対馬、中対馬、厳原の3カ所にあるが、上対馬から中対馬、厳原へ車で1時間半から2時間もかかる。上対馬町内の30代の主婦は「小さい子どもを持つ親として、万が一のことがあったときに困る。病院には今の態勢を維持してほしい」と不安を漏らした。
同じ離島へき地にある新上五島町の上五島病院も同様に医療スタッフ不足に悩む。医師の1人は「医者が1人でも倒れたら破たんしてしまう状態。限界に近い」と訴える。
県と離島4市町で構成し9病院を運営する県離島医療圏組合は五島市と対馬市、新上五島町に各3カ所ある病院を各市町1カ所の基幹病院に集約し、他の病院を診療所などに縮小する方向で検討を進めている。県の矢野右人病院事業管理者は「国に離島の特殊性を考慮した財源措置をしてもらわなければ厳しい状況だ」と話している。
=2008/12/04付 西日本新聞朝刊=