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政府(厚労省他)


「DPC対象病院」?「DPC病床」?

 DPC(入院費の包括払い)を導入する病院の増加に否定的な日本医師会の常任理事を務める藤原淳委員は、中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会(小委、委員長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)で、「DPCは『病院単位』で考えるべきではなく、急性期を扱う『病床単位』で考えるべきとの考えが前回確認されたと思うが、この文言が抜け落ちている」と指摘した。他の委員から「今まで通り(病院)でいい」との意見が相次いだが、遠藤委員長は「誤解を招かないように簡単な注釈を付けてはどうか」と提案し、了承された。(新井裕充)

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 厚生労働省は12月3日の小委で、「これまでのDPCの評価」と「DPCの適用がふさわしい病院」の2つの論点に関する「議論のまとめ」を示し、了承された。

 DPCの在り方をめぐっては、急性期医療を評価するDPC制度に、急性期以外の機能を中心とする病院が多数参加していることが問題となっている。
 DPCは、医療費の抑制や医療の標準化などを目的に、03年度から高度な医療を提供する「特定機能病院」など82病院で導入され、その後、中小規模の病院も参加するようになった。今年度、新たに358病院がDPC対象病院となったため、DPC対象病院は現在718病院。07年度DPC準備病院も含めると1428病院となり、全一般病床(約91万床)の約50.2%(約46万床)を占めるに至っている。

 DPCについて専門的に審議する中医協の下部組織「DPC評価分科会」では、DPC対象病院の拡大に歯止めをかけるべきとの意見もあったが、その基準(「急性期」の明確な定義など)について意見を集約することができず、「急性期とは患者の病態が不安定な状態から、治療によりある程度安定した状態に至るまで」との幅広い定義で決着したという経緯がある。
 このため、DPCの範囲については、「ある程度以上の重症な急性期」に限定せず、「すべての急性期」が対象になった。その一方で、DPCデータの質を確保するため、適切なデータの提出を求める改定を4月に実施している。

 「これまでのDPCの評価」について、厚労省は12月3日の小委で、「DPCの導入によって、医療の効率化・透明化については一定の効果が認められたと考えられる。今後は、医療の標準化や医療の質の向上など、より総合的な視点からの検証・分析が必要であるということで概ねの意見の一致が得られた」とのまとめを提示し、了承された。
 また、「DPCの適用がふさわしい病院」については、「ケアミックス型病院も含めて、現在のDPC対象病院とDPC準備病院間で、例えば救急搬送割合や平均在院日数などに明らかな傾向(の違い)は見られていないことから、基準を満たせばDPC対象病院として認めることで意見の一致が得られた」とのまとめを示した。

■「DPCは病床単位で考えるべき」
 
質疑で、DPCの拡大に慎重論を示している日医の藤原委員が、「DPCは『病院単位』で考えるべきではなく、急性期を扱う『病床単位』で考えるべきとの考えが前回確認されたと思うが、この文言が抜け落ちている」と指摘した。
 これに対し、保険局医療課の宇都宮啓企画官は、「DPCについては従来から病床、病棟単位で考えていたが、『DPC対象病院』という用語を使っていたので、そのまま(病院と)書いた。もちろん、内容としては、『DPCの対象病棟』であることは従前から変わらない」と回答した。

 藤原委員は「そうだとすると、DPC病院を『DPC病棟』と読み替えて考える人は少ないのではないか」などと食い下がったが、他の委員から「今まで通り(病院)でいい」との意見が相次いだ。藤原委員が「せめて、『議論のまとめ』の中に、『病床単位で考えていく』との文言を入れてほしい」と強く要望したため、遠藤委員長は「そのような意見が出たので、誤解を招かないように簡単な注釈を付けるということでよろしいか」と提案し、了承された。

 会議終了後、報道関係者の間で「藤原委員の指摘の意味が分からない」との意見が相次いだ。キャリアブレインの取材に対し、厚労省の担当者は次のように話している。
 「藤原先生のご指摘は恐らく、『病院』という表現を使うと、DPCを算定している病院はすべてDPCの対象になってしまうことになりかねないという意味ではないか。(急性期)病院の中には、療養病床や精神病床を持っている病院もあるので、誤解を招くという意味だと思う。これに対し、他の委員は『DPC病院という言葉を今まで使ってきているので、わざわざ書かなくても分かるでしょう』との意見だったと理解した。個人的な憶測で藤原先生のお考えを深読みすると、急性期以外の病棟や病床にDPCが拡大することを懸念したのではないか」

■「病床」と「病棟」について
 厚労省の担当者によると、「病床」とは病室の中にある個々のベッドを指し、「病棟」とは、1つのナースステーションで見ている「1つの看護単位」を意味する。つまり、病院の建物の中にあるいくつかの病室ごとに1つのナースステーションが置かれている場合、「その1単位を『病棟』というイメージ」と説明している。
 DPCでは、「一般病床」で構成される病棟が対象になると、その病棟(一般病棟)すべてが対象となる。ただ、「一般病棟」の中にも、「亜急性期入院医療管理料」などを取るための病床(ベッド)があるため、その病床を外す意味で使う場合には「DPC病床」という。
 担当者は「DPC算定病棟という言葉を使うことが多かったので、宇都宮企画官は『病棟』という言葉を使ったのだろう。ただ、『DPC算定病床』という言葉を使うこともある。DPCについて病床の話をするときは『DPC算定病床』で、病棟の話をするときは『DPC算定病棟』を使う」と話している。


更新:2008/12/04 14:44   キャリアブレイン

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