欧米を見れば「秋春制」不可能ではない
【金子達仁】2008年12月04日
Jリーグのシーズン移行論議が再燃している。2日に行われた検討プロジェクトでは、出席したJ12チームのうち、9チームから反対の声が上がった。「降雪地域では不可能」「メリットがない」といった理由が反対の根拠となっていたようだ。
確かに、シーズンが秋開幕の春閉幕というスケジュールになれば、札幌、仙台、山形、新潟といったチームはインフラの整備に莫大(ばくだい)な資金が必要になってくる。現状を鑑(かんが)みた場合、シーズン移行に反対する気持ちは理解できる。
だが、不可能ではない。
もし札幌で冬にサッカーをやるのが不可能だというのであれば、アメフトのNFLもかなりのチームが現在のカレンダーではやっていけないということになる。Jリーグでは不可能で、NFLでは可能になっている理由はひとつ、資金の有無である。ならば、冬だから不可能だと決めつけるのではなく、totoとの関係も考えつつ、資金の調達は可能かどうかという発想も必要ではないか。
寒さが客足を鈍らせるのでは、という懸念も、欧州やアメリカの実情、さらには札幌雪まつりの盛況などを考えれば杞憂( き ゆう)だろう。なにより、グラウンド状態さえ維持できれば、夏よりも冬の方が選手たちのパフォーマンスがあがるのは確実である。それだけでも、シーズンを移行するメリットはある。
大前提として、わたしはシーズン移行賛成論者なのだが、その最大の理由は、日本代表人気への依存度の大きさにある。
というのも、現在のカレンダーの場合、4年に1度開催されるW杯は、リーグ開催中の真っただ中ということになる。日本が上位進出を果たせればいいが、惨敗を喫した場合、「再開」という形で始まるJリーグが被るダメージは計り知れないものがある。そして、現在の日本代表の実力を考えた場合、上位進出の可能性がかなり小さいのもまた事実なのである。
だが、W杯の終了後に新しいシーズンが開幕するという日程になれば、各クラブの補強努力などでイメージは一新できる。今年の欧州選手権本大会にイングランドは出場することができなかったが、リーグ開幕時にはそんな空気など吹き飛んでしまっていた。
数年前、ボストンに滞在した時、地元テレビのCMで「レッドソックスの無念はペイトリオッツが果たしてくれる」というものを見た。野球のシーズンが終わったらフットボールというスタイルは、日本でも十分に定着しうるものだとわたしは思う。(スポーツライター)