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「法に退けられる子どもたち」
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「法に退けられる子どもたち」読了。

いわゆる「離婚後300日問題」と呼ばれる民法の規定の問題や、国籍法の婚外子差別問題について分かりやすく解説したもの。参議院法務委員会で国籍法改正についての審議が行われている今、多くの方に読んでいただきたい本です。

実は、国会議員のもとには、毎日のように国籍法改正反対派からのメールやFAXが届いているのですが、わたしが受け取ったそれらの意見のなかに、外国人に対する偏見に基づくものや、排外主義的な傾向のあるものが見られることに、大変心を痛めています。なぜなら、そのような偏狭な考え方は、日本の国益を損なうと考えるからです。

反対派のご懸念は「DNA鑑定を行わなければ、偽装認知が横行する」というものです。しかし、現行法においても日本人カップルが(あるいは偽装結婚した日本人男性と外国人女性が)「この子はうちの子です!」と外国人の子どもを偽装認知することは起こりうる事態であり、法改正によって不正の危険が生じるわけではありません。にもかかわらず、母親が外国人で未婚の場合だけDNA鑑定を課さなければならないのは合理的ではありません。もし偽装認知がそれほど問題であるなら、日本人全員に負担をしてもらわなければ実効性がないし、法の下の平等にも反します。

「日本の伝統は血統主義だ。DNA鑑定をして親子関係をはっきりさせて何が悪い?」という方もいます。もしその通りなら、先に述べたように日本人全員のDNA鑑定をしなければならないことになります。しかし、わたしは日本の家庭を守る立場から、DNA鑑定によって親子関係をはっきりさせることには反対です。なぜなら、そのことによってこの国の多くの家庭が破壊されてしまう恐れがあるからです。いま現在においても、認知をしている父親が、生物学的な父親ではないケースはたくさんあります。

「彼女が妊娠してしまった。しかし、ひょっとしたら他の男性の子かもしれない。でも俺は、彼女のことを愛してる。たとえ他の男性の子だとしても、俺はかまわない。一生をかけてこの子を守ることを誓う…。」

映画でもよく描かれるモチーフです。国家が親子関係にDNA鑑定を持ち込むことによって、こうした関係性はことごとく壊されてしまいます。はたして、それで良いのでしょうか?

日本は血統主義の国と言われていますが、それは国籍保持者を決めるのに属地主義ではなく家族関係で決めるという意味であって、DNAのレベルで血統が繋がっていなければならないという意味ではないはずです。現実をよく観察すれば、わが国は歴史的に後者の意味での血統主義ではないことがわかります。

日本には昔から様々な形の養子縁組あり、子どもがいない場合、遠くの親戚を跡継ぎに据えたり(徳川家!)、後継者として従業員に家督を継がせたりしました。 誰の子かわからない子は「村の子」として村人みんなで育てたというのも、民俗学を参照するまでもなくわが国の社会のあり方でした。こうした歴史の上に成り立っているのが日本の民法なのです。だから日本の民法では認知した父親=生物学的父親ではないのです。

このような社会的包摂性は、私は日本の美風だと思います。既に生きられている関係性や家族のあり方を尊重するという日本の伝統を守ることこそ、保守政治家の役割ではないでしょうか?

今年も「里親大会」に出席し、挨拶をさせていただきました。自分とは血の繋がりのない子どもと真剣に向き合い子育てを成し遂げた方たちに対して感謝状が授与されました。参加された多くの方が目頭を熱くされていました。血統主義ではないこの国の伝統が、現代にも息づいていると感じた瞬間でした。

本当に守らなければならない「日本」とは何か?国籍法改正をめぐる顛末は、改めて私たちにこの問いを突き付けているように感じます。

23:27, Tuesday, Dec 02, 2008 ¦ 固定リンク

 


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