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2008年12月4日

 枯れ葉の季節が幕を閉じようとしている。振り返ってみると、今年ほど枯れ葉の再利用がニュースとなって紙面を飾ったことはない

風情はあるが、厄介なごみにしかならなかった大量の公園の枯れ葉である。それが堆肥になり、園芸好きの人たちに配るサービスが北陸各地に広がった。リサイクル社会が生活に浸透しだした証しとして記録しておきたい

投書欄には「枯れ葉が肥料となって春に美しい花を咲かせる」との年配者の一文があった。リサイクルというより「輪廻(りんね)の哲学」と表現してもよく、命の循環を語る童話「葉っぱのフレディー」を思い出させて感動的だった

1世紀前の米国には名作「最後の一葉」がある。死を予感する若い女性を、老画家が風に飛ばされない「一枚の葉」を壁に描いて救う話だが、雨に濡れた老画家が亡くなり、若い命がよみがえる点がポイントだ。自然の輪廻を考えさせるのに枯れ葉はいい教材だ

還暦を過ぎた脚本家・竹山洋さんが昨日の本紙に「晩節を汚さず綺麗(きれい)な紅葉のように散りたい」と書いていた。確かに、人生で美しく枯れるのは、難しいことではある。


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