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社説:混迷・予算編成 「道路一般財源化」は嘘なのか

 これではとても一般財源化と言えぬ。道路特定財源の見直しを進めていた自民党は、道路整備に加えて関係する事業にも使途を広げた新たな交付金制度を創設し、地方自治体に1兆円を配分する方針を固めた。

 使い道を広げるといっても新交付金は「道路」中心に用いる事実上のヒモ付き財源とみられ、使途を定めぬ一般財源化との違いは明らかだ。国土交通省が将来の交通量予測を下方修正したにもかかわらず、道路予算確保に向けた与党の圧力も強まるばかりだ。閣議決定までした政府の約束である一般財源化の骨抜きは到底、容認できない。

 福田康夫前首相は今年3月、ガソリン税の暫定税率の期限切れを控え、道路特定財源の09年度からの廃止を表明、社会保障などに配分されるかが注目された。麻生太郎首相は3・3兆円の財源のうち1兆円を地方自治体に配分する方針を打ち出し、使い道が自由な地方交付税とすることまでいったんは明言した。

 ところが「地方道路整備臨時交付金」(約7000億円)の財源が奪われかねないと危ぶんだ国交省や自民党道路族は反発し、使途と金額を拡大したうえで新たな交付金に衣替えする案が浮上した。「交付税」増額は道路財源と別枠で処理される方向だ。

 国交省が新交付金の配分を統制すれば道路財源だった従来の交付金と同様に道路関連に用いられ、見直しどころか3000億円分の「焼け太り」にすらなり得る。これでは国民に嘘(うそ)をついたと言われかねない。

 やはり福田前首相が表明した現行の道路整備中期計画の作り直しも懸念すべき状況だ。国交省が先月公表した将来の自動車交通量の推計では30年の推計値が02年の従来推計より13%も下方修正された。

 今後10年間の道路整備費用を59兆円とする現行計画の根拠が崩れたのだから、新計画は大幅に改定されるべきだ。ところが、新計画では、目標とする総事業費が示されないという。これでは道路予算見直しの具体像が見えないではないか。

 歳出抑制見直し機運の高まりも重なり、与党では国の直轄事業や地方への補助金など道路関係予算の確保を求める声が加速している。補助金と新交付金も合わせれば地方に配分される道路関係予算は結局、前年の水準が保たれそうだ。一方で自民は、ガソリン税などの暫定税率も当面維持する方針を固めた。やはり「道路」は聖域なのか。

 私たちが一般財源化方針を評価したのは、税体系、歳出構造を抜本的に改め「土建国家」の仕組みを変える跳躍台になり得ると期待したためだ。結局は春の「道路国会」を乗り切るための方便だったのか。首相がいったん語った「交付税」の言葉の軽さをみると、そう思わざるを得ない。

毎日新聞 2008年12月4日 東京朝刊

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