【台北・庄司哲也】日本統治時代に台北近郊に建てられたハンセン病療養所「楽生療養院」が、都市高速鉄道の車両基地建設のため、一部が取り壊されることになった。ハンセン病の差別の歴史や当時の建築を伝える施設として保存運動が起こり、一部のハンセン病の元患者が代替施設へ移ることを拒否。だが、台湾当局は3日から取り壊しのため、強制執行を開始した。
同施設は、1930年に当時の台湾総督府によって建てられた開放型の施設。鉄道の建設計画では一部を残し、施設の建つ丘を切り崩す。だが、一部の元患者は「長年、住み慣れた住居だ。退去はハンセン病政策の強制隔離と同じ手法だ」として反発。学界などからも「日本統治時代の歴史的な建築物を残すべきだ」と、保存を求める声が上がっていた。
このため、鉄道建設工事は4年にわたり中断していたが、台湾当局は3日、「建設の遅れで、すでに大きな損失が出ている」として強制執行に着手。警官約600人を動員し、保存を求めて座り込みを行った学生ら約200人を排除した。
施設には現在、36人の元患者が残っている。
毎日新聞 2008年12月3日 20時17分