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【教育】日本流「ゼロトレ」じわり浸透 進学でも実績向上

2008.12.3 08:01
このニュースのトピックス学校教育
段階的な規律指導を実践する愛知県立豊明高校=愛知県豊明市段階的な規律指導を実践する愛知県立豊明高校=愛知県豊明市

 ■生徒指導に明確なルール 違反した生徒に罰則科す

 生徒指導で明確なルールを学校が示し、違反した生徒に罰則を科すことで規律を高める「ゼロトレランス」(直訳は「非寛容」)。荒れた学校への処方箋(せん)として1990年代の米国で浸透したこの指導理念を、文部科学省が日本でも導入する考えを示したのは平成18年5月だった。2年以上がたち、同理念を教科指導に取り入れて進学実績を伸ばす学校が現れるなど日本流の広がりをみせているようだ。(鵜野光博)

 埼玉県入間市の私立狭山ケ丘高校では、期末試験で落第点を取った生徒に対し、追試験で救済することを4年前からやめた。

 「きっかけの一つはゼロトレランス理念だった」と小川義男校長は話す。平成12年に同理念を日本に紹介した元愛知県立高校長の加藤十八氏の著作などに影響を受けたという。

 同校ではそれまで、生徒が合格点を取れるまで追試験を繰り返した。「何度も追試験に落ちる生徒には、『結局は進級できる』という甘えがあった」と小川校長。追試験廃止後は、5科目以上で落第点を取れば無条件で留年とする一方、4科目までなら、科目ごとに膨大な量の課題を与え、提出できた生徒には進級を認めている。

 「甘えは認めないが、課題をこなした生徒には必ず学力がつく。毅然(きぜん)とした態度で指導することは、子供の可能性を信じてやることでもある」(小川校長)。

 ゼロトレランスに詳しい国立教育政策研究所の藤平敦総括研究官は、「荒れた学校だけでなく、狭山ケ丘高のように進学校での教科指導や、キャリア教育でもゼロトレランス的な指導を行う学校が増えている」と話す。

 「当初は生徒への厳罰や排除といった側面が強調されたが、新学習指導要領で道徳が全教科で教えられることもあり、ゼロトレランスという言葉をあえて使わなくとも、事前にルールを提示してそれを守らせる教育は、小中高のすべてで広がっている」

 前出の加藤氏は、校長時代、「管理教育」の実践者として批判の矢面に立ったこともあった。

 加藤氏が初代校長を務めた愛知県立豊明高校(豊明市)では現在、午前8時半を過ぎて登校した生徒には通称「遅刻カード」を渡し、1回目は指導部長の口頭注意、2回目は反省文、3回目は学年主任の指導と反省文−と指導を強め、5回目は保護者を呼ぶ。

 同校の都築仁美教頭は、「段階的に指導を行うことを事前に明示することで、保護者も子供の行動と指導との関係が理解できるようになる」とし、「豊明高は落ち着いているが、前任校では、万引や喫煙といった特別指導が年間200件に及んだ。しかし、教師側が場当たり的な対応をせず、段階的指導をきちっと行ったところ、3年後に4件にまで減った」と話す。

 加藤氏は「校内暴力などで荒れた学校に対し、90年代の米国がゼロトレランスで立て直したのとは対照的に、同じ時期に文部省(当時)は、管理教育を廃止して校則を緩めるという反対のことを現場に求めていた」と振り返る。

 「規則ではなく信頼関係で指導せよ、生徒と同じ目線に立てという教育論は、実際の教育現場では教師から指導の自由を奪い、士気の低下も招いた」と加藤氏。20年近くたった平成18年に、ゼロトレランスを肯定した教育行政のちぐはぐさを指摘する。

 藤平研究官は「生徒の話を聞くことと、毅然とした指導とのバランスが必要」とし、「大切なことは、教師が『寛容』の名の下にあいまいな指導をしないことだ」と話している。

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段階的な規律指導を実践する愛知県立豊明高校=愛知県豊明市
元愛知県立高校長の加藤十八氏
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