和歌山市本町2のフォルテワジマで1日、シドニー五輪男子柔道金メダリスト、井上康生さんの講演「柔道と私」があった。25年間にわたる柔道人生を振り返りながら、「柔道を柱に生きていきたい」と今後の目標などを語った。
講演は同店の開店1周年記念で開催され、200人が集まった。井上さんは00年シドニー五輪100キロ級で金メダルを獲得。99、01、03年の世界選手権を3連覇した。けがに苦しみ、今年5月、現役を引退した。
井上さんが「分岐点だった」と語るのは99年6月。柔道の道に進ませてくれた母を亡くしたことという。当時、大会で1回戦負けが続き、苦悩を味わっていたところに追い打ちをかけた。
その後、「母へささげる気持ちで」と練習を重ねた。シドニーでの表彰式では、母の遺影を手に表彰台に上がった。「苦しんでも一つ一つ乗り越え、逃げないこと」を母の死を通じて学び、柔道だけでなく人生の支えになったという。
同市木ノ本の主婦、濱地真利さん(32)は、長男の康生君(6)を連れて来場。「シドニーで金メダルを獲得した時の姿に感動して、息子に同じ名前をつけた。生き方を貫いているところがかっこいい」と話していた。【宮嶋梓帆】
毎日新聞 2008年12月2日 地方版