「無理に稼ごうと医師の募集に走る」―厚労省企画官
「医師が20人以上ならこのぐらいの係数というやり方をすると、無理に係数を稼ごうとして医師の募集に走る」―。厚生労働省保険局医療課の宇都宮啓企画官は、病院の機能によって診療報酬に差をつける「機能評価係数」について、救急や産科医療、高度な医療提供など病院が果たす各機能に応じて、“積み上げ方式”で細かく評価する考えを示した。
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厚労省は12月3日、中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会(小委、委員長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)で、医療機関の前年度の収入を保障する「医療機関別調整係数」の廃止に伴って導入する新たな「機能評価係数」に関して、基本的な考え方(基本方針案)を示した。
しかし、委員から「チーム医療やパフォーマンスなどを具体的に評価すべき」「具体的なイメージが分かるようにしてほしい」などの意見が相次いだため、継続審議となった。
基本方針案は、急性期の入院医療を評価するDPC制度の在り方について専門的に審議しているDPC評価分科会で、11月7日に了承されており、▽急性期を反映する▽医療の透明化・効率化・標準化・質の向上など患者の利点が期待できる▽社会的に求められる機能・役割を重視する▽地域医療への貢献という視点▽連続的な評価の導入▽係数に上限値を設ける▽プラスの係数を原則とする―の7項目。
12月3日の小委で、宇都宮企画官は「あくまでも(DPC評価)分科会で(了承された)『たたき台的なもの』ということで示した。当然、修正すべきとか、削除すべきとか、自由に議論してもらい、基本的な考え方をこちら(小委)で決めてもらった上で、その(基本)方針にのっとって、DPC評価分科会で細かい議論に進みたい」と説明。遠藤委員長が委員から意見を求めた。
対馬忠明委員(健保連専務理事)は「あまり異論はなく、基本的な視点としては書けていると思う」と評価しながらも、「現行の(診療報酬)体系をつくり変えていくわけで、現行の出来高的な要素のところなどもすべて総合的に見ていくという視点が、ちょっと抜けていないか。調整係数の段階的な廃止との関連も含めて総合的に検討すべき」と注文を付けた。
遠藤委員長も、「(基本方針の)3番目に出てくる『社会的(に求められる機能・役割)』と、4番目の『地域医療への貢献』とを分けているが、地域への貢献も『社会的』だ。もう少し具体的なイメージが分かるようにしてほしい」と苦言を呈した。
■“y=ax+bという一次直線”
西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)は「基本的には賛成だが、これ(基本方針)だけを読んでも、委員の方々はなかなか理解できないだろう」と指摘。基本方針に示された「連続的な評価の導入」と「係数に上限値を設ける」について、具体的に説明するよう求めた。
「連続的な評価の導入」について、宇都宮企画官は「例えば医師が10人以上ならこのぐらいの定数とか、20人以上ならこのぐらいの係数とか、そういうやり方をすると、無理に加算を取ろうとか係数を稼ごうとして、医師の募集に走ることが起きかねない」と回答。「DPCによって細かいデータをいろいろ取ることができているので、『幾つだったらどのようにする』ということではない。イメージとしては、“y=ax+bという一次直線”みたいな、つまり、ある程度のものが積み重なれば、それに応じて加算も自動的に上がるようなもの」と説明した。
その上で、「係数の上限値設定」については、「そのように(積み上げ方式に)した場合、無限に(係数が)増えてしまうと問題がある」と答えた。
このほか、坂本すが専門委員(日本看護協会副会長)は、チーム医療において看護師らが果たす役割などを機能評価係数の評価に盛り込むべきと提案。「DPCが急性期(医療)を重んじていくという前提であるならば、急性期のいろいろな病院がどのようなことを始めているかというところ(取り組み)をきちんと評価していく必要がある。チーム医療やパフォーマンスなどを具体的に評価すべき」と述べた。
委員からの意見を踏まえ、遠藤委員長は「基本的にはこれでいいという雰囲気ではあるが、『それはやや“不消化”である』という感じもある。この問題(機能評価係数の基本方針)を小委員会で扱ったのは初めてなので、もう一度議論したい。事務局(厚労省側)から新たな形で(資料を)出していただき、それをベースに次回検討したい」と提案し、了承された。
更新:2008/12/03 22:08 キャリアブレイン
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