Divers eye 全力で生きるために 坂田健史 〔前編〕
あえて自分を追い込むことによってチャンピオンへの道を切り開いた坂田。頭で考えることは簡単だが、実際に行動に移すことはなかなかできることではない。
大晦日、デンカオセーン・シンワンチャー(タイ)を相手に行われる防衛戦の舞台は広島。3ヶ月でボクシング部をやめた、生まれ故郷が舞台である。デンカオセーンとは昨年11月4日に引き分けたことがある。
-やはり広島での防衛戦は思い入れが違いますか?
はい。正直、気合いが違います。地元でチャンピオンとして試合ができるというのはうれしいことですが、それと同時に絶対負けられない一戦ということです。デンカオセーン選手とは今回の試合できっちりと決着をつけたいと思っています。世界戦というのは普通の試合何十試合分もの経験になると思うんです。それをぼくはこの1年で何度もこなしてきました。実際に練習でも昨日より今日、今日より明日と、進歩していることを実感しています。
1年前の自分と今の自分ははっきりと違うというところをお客さんに見てほしいです。
-坂田選手といえばラウンドを重ねるごとに強くなっていくことで知られています。逆にそれによってスロースターターと言われることもありますが?
そうですね。自分自身では意識したことはなくて、最初から最後まで本気で戦っているのですが。ただ、試合中に相手の特徴と、取るべき対策を感じ取っていくことはあります。だから、後半に強くなるように見えるのかもしれません。当然、相手もそこを狙ってくるとは思います。しかし、僕は毎回、対戦相手によって練習方法を変えているし、デンカオセーン選手のことも研究しています。
もうスロースターターとは言わせませんよ。
坂田は世界王座に3度挑戦し、3度負けている。通常なら3度も失敗すれば引退も考えられるが、不屈の闘志で4度目の世界戦に挑戦。見事4度目の正直で世界チャンピオンに上り詰めた。
-4度もの世界王座挑戦を支えたものは何ですか?
いちばん大きかったのは支えてくれる周囲の人たちの存在ですね。実は3度目の挑戦で負けたとき、引退を考えていたんです。しかし、協栄ジムの金平会長や周囲の人たちが「まだあきらめるな」「必ずもう一度チャンスを作ってやる」「次は絶対に勝てる」って言ってくださった。周りがこれだけ期待してくれるのに、自分の中で勝手に「勝てないからやめる」って考えるのは違うって思ったんです。これだけ環境に恵まれてて、支えてくれる人がいるっていうことは、自分がチャンピオンになることが最大の恩返しになる、と気づきました。
-今までにやめようと思ったのはその3度目の挑戦失敗のときだけですか?
そうですね。やめようと思ったのはそのときだけです。ボクシングを始めてからずっと世界チャンピオンになりたかった。もちろん最初のころは世界チャンピオンにはなりたかったけど、実際に自分がなれるとは思っていませんでした。世界というのはあまりに大きな目標で、実感がわかなかったんです。実際に世界チャンピオンを意識しだしたのは、2003年に、2度目の日本チャンピオンに返り咲いたときくらいからですね。周りからもそういう声が出始めて、自分でも意識し始めました。そこまでは「日本チャンピオンになれたんだ」という気持ちが大きくて、さらに先を見ることはできませんでした。ただ、最初から自分がどこまでいけるのか、とことんまで挑戦してみようとは思っていました。一度ボクシング部から逃げ出したことがありましたからね(笑)。
とにかく、ボクシング部を逃げ出したときのことは本当に後悔して、もう二度と後悔したくない、あのときこうしておけばよかった、っていうのを残しておきたくないという気持ちは、今でも強くありますね。
-もしボクシングをやってなかったら今、何をしていると思いますか?
何をしていたかは具体的にはわかりませんが、何をしていたとしても中途半端だったと思います。後悔したくない、とことんまで挑戦してみよう、という気持ちを持たせてくれたのはボクシングですから。
-坂田選手にとってボクシングとは職業ですか? それとも生き様、生活ですか?
「生き方」ですね。職業というのはちょっと違うし。自分が選んだ「道」とも言えますね。
-しかし、ファイトマネー以外に収入源はないわけですよね?
はい。
ファイトマネー以外に収入源はありません。だから勝ち続けないといけない。そのためには練習し続けないといけない。
世界チャンピオンになってボクシング一本で生活はできるようになりました。しかし、
「殺されてしまうんじゃないだろうか」「無事にリングを降りられるんだろうか」という恐怖で、頭がおかしくなってしまいそうなときはあります。
それでもやり続けたい。これは職業というよりも生き方と言ったほうがしっくりくる気がします。そして、その恐怖心に打ち勝つためには、ただひたすら練習するしかないと思います。実際に恐怖心を完全になくすことはできないのですが、「これだけやったんだから大丈夫だろう」と開き直るためには、とにかく練習するしかないですね。それでも、デビューから今まで、ゴングが鳴るまでは毎試合生きた心地はしないですけどね。
-そういった緊張感から開放されるときはありますか?
試合が終わって、2週間くらい長期の休みをもらって、本当に何にも考えずにのんびりすごしたり、温泉や海外に旅行したりするときですね。うちで飼っている猫と遊んだり。
-飼われている猫は1匹ですか?
3匹です(笑)。みんなけっこう大きいですよ。
-世界チャンピオンになって変わったことはありますか?
自分自身、世界チャンピオンが目標だったんですよね。だから、世界チャンピオンになれば目標を達成して、満足すると思っていたんです。しかし、何も変わりませんでした。逆にもっと自分のちからを証明しなきゃいけないと思うようになりました。
それと、世界チャンピオンになって、知らない人が声をかけてくれたり、親戚も増えました(笑)。しかし、いちばんうれしかったのは、ずっと応援してきてくれた人が喜んでくれたことですね。
常に死の恐怖と向き合い、厳しいトレーニングを重ね、防衛を続ける坂田。しかし、話してみると本当にやさしい印象だった。その心の中には、常に後悔したくない、今やれることを限界までやっていきたいという気持ちと、周囲の人間への感謝の気持ちがあるようだ。
次回、後編(12月15日)では、内藤大助選手との統一世界チャンピオン戦についてや、亀田興毅選手について、内藤と亀田のどちらが強いと思うか、結婚と今後誕生するであろう自身の子どもについてなど、さらに坂田の内面に踏み込んでみた。ぜひ期待してほしい。
(文責・近添真琴)
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