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【コラム】

中日春秋

2008年12月3日

 何となく「○○地方は一週間前、既に梅雨入りしていた」というような、気象庁の発表を思い出した

▼全米経済研究所が「米国の経済は既に一年前から景気後退(リセッション)期に入っていた」と正式に認めたとのニュース。成功の中に失敗の芽は育っているというが、またずいぶん大木に育つまで気がつかなかったものだ

▼リセッションもしかり、不況の意を持つ英単語はいくつかある。コントラクション(収縮)もその一つ。これには緊張が強まるイメージがあるが、逆のスラック(緩み)にも不況時という意味がある

▼副詞では「だらしなく」、動詞としては「怠ける」の意まであり、スラックが必要などと主張すれば、気でもふれたかと思われよう。だが、この語には、別にもっといい訳語もある。それは「ゆとり」だ

▼同じような悲劇の続発も、医療費削減の波の中で現場のスラックが失われたせいだろう。今度は、早産の未熟児が札幌市内の七病院で受け入れ拒否され死亡していたことが分かった。新生児集中治療室が埋まっていたとの説明にその思いは募る

▼何であれ、ゆとりとは平時には、「空き」や「遊び」の顔をしているものだ。今のご時世では余計に無駄に見えよう。しかし、だからといってそれをなくせば、肝心な時にシステムは機能しない。スラック(不況時)にもスラック(ゆとり)は守りたい。

 

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