日銀は2日の金融政策決定会合で年末や年度末に向けた企業金融の円滑化のための対策を決めた。企業の資金調達の環境が厳しくなっているのに対応したものだ。日銀の金融調節の手段を拡大することで、企業の市場からの資金調達や銀行からの借り入れをしやすくする。
日本の企業や金融機関を取り巻く金融環境は、米国ほどではないもののここへきて急速に悪化している。政府・日銀は危機意識を持ち、金融逼迫(ひっぱく)で景気が一段と冷え込まないように、より積極的な手を打ち出していくべきである。
日本の金融環境が悪化しているのは、米国発の金融危機の影響に加え、景気悪化による不良債権増加や株安で、金融機関や投資家が資金の供給に消極的になっているためだ。
コマーシャルペーパー(CP)や社債の利率は大幅に上昇しており、市場から資金を調達しにくくなった大企業は、その分を銀行借り入れに切り替えている。その影響もあって中小企業はこれまで以上に銀行からの借り入れが難しくなってきた。
日銀が新たに実施する資金供給策は、こうした企業の資金繰り悪化を食い止めるのが狙いだ。銀行などが日銀から資金を借りる際に、日銀はこれまでの基準よりも低い格付けの社債なども担保として受け入れるほか、低い金利で期間が長めの資金を供給する新しい手法を導入する。
これによって当面の焦点である年末の企業の資金繰りはある程度緩和されそうだが、全般的な金融の引き締まりを食い止めるにはなお十分ではない。金融環境の悪化のスピードは急であり、日銀は追加的な措置もためらわずに検討すべきである。
企業の資金繰りの支援では、日銀だけでなく政府の対応も急務だ。
政府は追加経済対策で信用保証制度による緊急保証枠などを9兆円から30兆円に拡大することを決めたが、これを盛り込む第2次補正予算案は来年に先送りされている。信用保証を使った貸し出しは中小企業の資金繰り改善に有効であり、早急に枠の拡大を実現すべきである。
金融機関の資本増強も金融環境の改善には欠かせない。
不良債権の増加や株安を背景に、事実上資本が不足する金融機関が増えてきている。地方金融機関に予防的に資本注入する内容を盛り込んだ金融機能強化法案は、政局をめぐる与野党の思惑がからみ、成立のメドが立っていない。早急な成立が望ましいが、政府はこれにとどまらず、金融機関の経営健全化のための施策を積極的に打ち出していくべきだ。