病気に対する処方せんが出されているにもかかわらず、それに従わず治療しなければ、体が悪くなる一方なのは、当然でしょう。
岡山県などの地域の現状について、そんなことをあらためて強く感じました。東京支社で担当してきた「地域の針路を問う」インタビューシリーズを振り返ってのことです。五月から月一回掲載し、十一月二十五日付の紙面で終えました。衰退する地方の危機に対してどう振興を図るべきか、地域政策の問題点や目指す姿を第一線の専門家に指摘してもらいました。
その中で地域の病状の診断や処方せんについて、くっきりと浮かび上がる共通項がありました。
岡山は中四国の交通結節点にあるにもかかわらず、岡山市などの都市の求心力が弱く、活力を失ってきている。商業施設などが郊外に分散して中心市街地のにぎわいが少なく、魅力に乏しいことが大きな要因だ、といった診断です。
処方せんとして、車社会の進展とともに郊外に低密度に拡散した都市構造を転換し、高密度なにぎわいのある都心づくりが急務。具体的な施策では、規制による郊外への分散抑制や、歩行者が楽しめる都心の快適な空間づくり、人々を都心に運ぶ公共交通の充実などです。
しかし実際に行われているのは、郊外開発の促進や、おざなりの公共交通政策であり、事態は悪くなる一方のように思われます。専門家らが口をそろえる処方せんがあるにもかかわらず治療しなければ、将来に大きな禍根を残します。為政者の責任は大きいでしょう。
(東京支社・岡山一郎)