書棚を整理中に、六―七年前の経済専門誌が何冊か出てきた。不況が厳しかったころだ。問題企業とか破たん懸念先、三月危機といった言葉が繰り返し語られる。
当時「市場から撤退を迫られる」などと書かれた企業がある。だが、今調べてみれば大多数が存続している。額面割れだった株価が、この金融危機にあっても当時の十倍以上するところもある。
景気の後退局面では人々の不安感が一層状況を悪くするという。「騒ぎすぎ」と指摘する専門家もいないではない。案外傷は浅かったとなってくれれば喜ばしい。
ただ、日本経済の主軸たる製造業について最近、「ガラパゴス化」という言葉が気になっている。日本の製品は、孤島で独自の進化を遂げた生物のような状況にあるというのである。
例えば携帯電話。国内では各社が高機能ぶりを競う。しかし、世界市場、特に新興国ではそこそこの性能でも安価な方が売れる。結果、日本のケータイは世界シェアをどんどん失っている。同様傾向の製品は他にもあると「ガラパゴス化する日本の製造業」で著者の宮崎智彦氏は警鐘を鳴らしている。
技術力あるわが企業群は今度も大丈夫。そんな内心の思いが、ややぐらつく。何度も危機を乗り越えてきた産業界が本気で対応すれば…と思ってはいるのだが。