世界的な景気後退を背景に、国内の雇用が急速に悪化している。厚生労働省の調査によると、今年十月から来年三月までに企業のリストラで失業したり、失業する見通しの派遣や期間従業員などの非正規労働者が三万人を超えたことが分かった。
確定事例だけの集計でこの結果である。景気悪化とともに、今後さらに増えていくのは確実で、不況が正社員に比べて立場の弱い非正規労働者の雇用や暮らしを直撃していることをあらためて示した格好だ。
厚労省の把握したリストラは全国で四百七十七件あった。雇用形態別では、期間満了や中途解除による派遣労働者が約二万人と最も多く、次いで期間従業員ら契約社員、工場などで働く請負労働者、パートなどの順となっている。
業種別では、自動車、電機など製造業の派遣労働者が約二万人と全体の65%を占めた。特に自動車産業は、輸出企業の代表としてここ数年の経済成長を支えてきたが、国内外での販売不振のため非正規社員の削減を急いでいる。
トヨタ自動車の期間従業員は三月に約八千八百人いたが、来年三月末までに三千人まで減らす可能性がある。三菱自動車も国内のグループ全五工場で減産し、派遣と期間従業員を一千人規模で減らす見通しだ。
二〇〇四年に製造業で労働者派遣が解禁されてから、企業は雇用契約期間が短く、人件費が安い派遣労働者や契約社員を大幅に拡大させてきた。今では労働者の約三分の一が、非正規労働者で占められる。
今年の青少年白書は、二十五歳から三十四歳までの「年長フリーター」が、固定化している可能性を指摘した。就職氷河期に仕事に就けず、非正規労働を続けている世代だ。労働者の格差をこれ以上拡大させることがあってはなるまい。
リストラの波は正社員にも及んできた。派遣社員らの削減が続く電機業界では、日本IBMが一千人規模の人員削減を年内に実施する。不動産業界、スーパーなどにも広がる勢いだ。
来春卒業する大学生への内定取り消しも相次ぎ、厚労省の調べでは三百人余りに上っている。内定は会社と労働契約が成立しているとみなされ、取り消さないのが原則である。
政府は緊急対策本部を設置したが、まずは企業に雇用確保への努力を強く促し、非正規労働者の不当解雇や大卒者の内定取り消しに監視の目を注ぐ必要がある。その上で新たな雇用創出など実効性ある対策に知恵を絞らなければならない。
ついに悲願だった岡山初のJチームの誕生である。一日のJリーグ臨時理事会で、日本フットボールリーグ(JFL)で四位を確保したファジアーノ岡山のJリーグ2部(J2)入会が承認された。
ファジアーノは富山市で開かれたJFLの今季最終戦でカターレ富山と対戦。試合は1―1で引き分けたが、五位のガイナーレ鳥取が敗れたため、リーグ四位が確定し、成績面での昇格条件をクリアした。さらに、入会条件とされていた一億円以上の広告収入も確保し、J2昇格が正式に決まった。
チームが発足したのは二〇〇三年九月だ。昨年、三年連続で臨んだ全国地域リーグ決勝大会で初優勝を飾り、今季からアマチュア最高峰のリーグJFLに昇格した。それからわずか八カ月での快挙である。
不屈の闘志で戦い抜けた選手らのひたむきな努力をたたえるべきだろうが、ホーム最終戦に一万人が詰めかけるなど盛り上げた地元の熱い声援、スポンサー獲得に奔走した関係者らの熱意も忘れてはなるまい。
ただ、J2に昇格すれば新たな課題も浮上してくる。J2クラブの平均予算約十二億円(〇七年度)に対し、ファジアーノが見込む来季予算は四億七千万円で、選手人件費で雲泥の差を付けられそうだ。膨らむ運営費にスポンサー確保も難題だ。試合の質量とも格段に上がる中、選手をどう育成していくかも試されよう。
岡山市の政令市移行を控え、、都市の魅力や情報発信にJチームが果たす役割は大きかろう。チームが成長する喜びを地域で分かち合えば、活力も生まれるはずだ。運営資金をどう確保し、プロサッカーチームをどう支援していくべきか、地域全体で考える必要がある。
(2008年12月2日掲載)