頑張れ! 左巻き
「聞け、万国の労働者」という歌があるわけだ。正式な名称はメーデー歌というらしいんだが、物凄く有名な曲です。1922年のメーデーで初めて歌われたというから、かれこれ90年ほど前の曲なんだが、とりあえず上のようつべで聞いていただくとして、沖縄民謡というかチンドン屋というか河内音頭というか、演奏しているバンドについては後で説明します。まぁ、メーデー歌なので、典型的な左巻きのプロパガンダソングです。で、一方では「歩兵の本領」という歌もあります。こちらは軍歌なので、典型的なライトなお方のプロパガンダソングです。下のようつべでお聞きください。
こちらは明治44年というので、1911年ですね。時代的には「歩兵の本領」の方が早いわけだ。「アムール河の流血」を元歌として、明治四十四年中央幼年「百日祭」で替え歌「歩兵の本領」を発表。 という事で、メーデー歌は「歩兵の本領」の替え歌という事になるんだが、「歩兵の本領」も「アムール河の流血」の替え歌です。で、Wikipediaによれば、だ。
メーデー歌(メーデーか)は、日本の労働歌。作詞は大場勇、作曲は栗林宇一。歌い出しから「聞け万国の労働者」とも呼ばれるが、JASRACに登録されているのは前者。なお、原曲である「アムール川の流血や」はJASRAC無信託である。
「アムール川の流血や」の替え歌で、当時池貝鉄工所の従業員・労働組合員であった大場がメーデーで歌う為の行進歌として作詞し、1922年の第三回メーデーで発表された。
「アムール川の流血や」の旋律そのものは知っている人も多かったためか、インターナショナル以上に広く膾炙した。戦後もメーデーの時には耳にすることができた。また、軍歌『歩兵の本領』と同じメロディ。
なお、北朝鮮でも、朝鮮人民軍功勲国家合唱団が朝鮮語でカバーしている。
という事なんだが、「アムール河の流血」というのは義和団事件で揺れる中国情勢を歌ったものです。
1900年6月1日、清国がブラゴベシチェンスクに襲撃を加えたことに対して、ロシア軍の報復が始まり、ロシア領内にいる清国人を片っ端から虐殺して黒河(アムール川)に投げ込みます。老若男女問わず清国人と見れば虐殺。その数は1万とも2万とも3万とも言われて、アムール川を死体がイカダのようになって流れたといわれています。
この事件をテーマに歌ったのが♪アムール河の流血や♪です。3番の歌詞など、”満清すでに力尽き 末は魯縞も穿ち得で 仰ぐはひとり日東の 名もかんばしき秋津島”
中国はすでに力尽き衰退した。勢いのあった弓矢もやがて勢いが衰え、しまいには魯の名産の薄い絹の布さえ貫くことができなくなるものだ。これからはアジアの盟主は日本だけだ!と歌っています。
というわけで、それぞれの時代を反映したプロパガンダソングなのです。ひとつの曲が、歌詞を時代によって変えながら生きて来たというのは面白いね。で、
「歩兵の本領」ができたのは明治44年ですから、当時の労働争議の参加者(20~30代)はそれまでの間に徴兵訓練を受けてこの歌を習い覚えた人が多かったはずです。そうでなくても軍歌は徴兵経験のない一般庶民にも広く知られていました。(「敵は幾万」など)
また、元歌である「アムール河の流血よ」も、もともと旧制高校の寮歌です。当時は寮歌もまた、旧制高校の生徒でなくても一般庶民に広く知られるものでした。(「嗚呼玉杯に花受けて」など)
このように、二重の意味で広く知られた歌であったのだと思います。
まぁ、今でも北朝鮮で歌われているらしいんだが、北朝鮮がカバーしたのは「メーデー歌」なのか「歩兵の本領」なのか、ミャンマーの軍隊は♪守るも攻めるもクロガネの♪でお馴染みのアレで行進してるらしいので、プロパガンダの道具に、右も左も関係ないわけです。
で、話はいちばん上のようつべで「聞け万国の労働者」を歌っていたバンドについて、なんだが、ようつべにバンド名が書いてなかったので、調べるのにちょっと時間がかかりました。
ソウル・フラワー・ユニオンというバンドです。どういうバンドかというと、
日本列島近隣の民謡(ヤマト、沖縄、朝鮮、アイヌ等)や古い大衆歌謡(壮士演歌、労働歌、革命歌等)、アイリッシュ・トラッドやジプシー音楽などのマージナル・ミュージックを、ロックン・ロール、リズム&ブルース、スイング・ジャズ、サイケデリック、カントリー、レゲエなどと融合させ、唯一無比のクロスブリードな世界観を作り上げている。
こちらに公式サイトがあるんだが、パレスチナの難民キャンプや北朝鮮や沖縄の辺野古でコンサートやるなど、バリバリの左巻きです。これくらい左巻きだとアッパレだね。こういうプロパガンダバンドって、たいてい面白くないんだが、このバンドはけっこういい歌もやってます。
ライブで人気の「風の市」という曲。関西を拠点に活動しているので、東京ではまだあまり知られてないかも知れない。ただ、阪神大震災の時に、メガホン持って被災地に駆けつけて慰問ライブをやったので、マスコミにも取りあげられた。
1995年、阪神・淡路大震災の直後に伊丹英子の発案で、震災被災者を励ますために、ソウル・フラワー・モノノケ・サミット名義で「出前慰問ライヴ」を開始。被災地特有の諸般の理由からアコースティックな楽器を用いることにし、エレキ・ギターを沖縄の三線に、ドラムを朝鮮のチャンゴに持ち替え、他のメンバーはそれぞれアコーディオンやチンドン太鼓、クラリネットなどに持ち替え、マイクの替わりにメガホンや拡声器を使った(当時のライナーノートによれば「非電化バンド」と称している)。震災被災者の中でも、特に老人達のために、戦前戦後の流行り唄や壮士演歌、ヤマト民謡・沖縄民謡・朝鮮民謡・アイヌ民謡などをレパートリーにし、チンドン・アレンジで演奏し、彼らを力付けた。震災の一ヶ月後に書き下ろした『満月の夕』では、震災の惨状や、復興への厳しい現実、そして、それらに向かい合う人々のひたむきな姿を歌い、大きな反響を得た
「聞け、万国の労働者」なんぞ歌っているのは、そんな経緯があったらしいです。上のWikipediaにも出ていた「満月の夕」というのもようつべにありました。
まぁ、アレだ、右でも左でもいいんだが、プロパガンダバンドやるんだったら、これくらいの行動力持ってくれよ、というお手本みたいなバンドだね。で、聞くところによれば最近、愛知駅前には、夜中になると大きなバッグ抱えて行くところがなくてションボリした派遣工崩れが涙ぐんでるそうで、東海地方のストリート・ミュージシャンで名前をあげたいヤツがいたら、ギター一本抱えてそいつらを勇気づける歌でもやりに行くといいよ。プロパガンダソングは現場から生まれる。まぁ、おいらは高齢なので遠慮しとくが。
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野次馬さま
まったくもう。。こういう記事が書ける方は貴殿以外おられません。
本当に本日は堪能いたしました。ツキナミながら厚く御礼申し上げます。
投稿 odinn | 2008/12/03 00:21
深いエントリーですね。
昔読んだある本に、
士気を鼓舞する時は、漢語調。
磨り減ったココロを癒す時には、和語の歌。
っつーのがありましたね。
投稿 ジジイ | 2008/12/03 00:21
昭和歌謡と同じでシャレ半分以上で楽しまないといけません。わかってナナメ聴きするのが楽しむコツ。
マジレスする変な厨房が何人いるかな。
投稿 昭和歌謡と同じ | 2008/12/03 00:23
ソウル・フラワー・ユニオンは
「海行かば山行かば踊るかばね」が好きですね。
アルバム通して聴くと思想的にちょっとアレですが。
投稿 魔界の牧場 | 2008/12/03 00:27
ソウルフラワーユニオン
90年代に意識的に日本のロックを聴いてた今の30代なら
一度は聴いたんじゃないすかね
オラ厨房ン時に前身バンドのニューエストモデルとメスカリンドライヴのファソですた
投稿 薬試寺教授 | 2008/12/03 00:33
ここでソウルフラワーユニオンの名を見るとは思わなかった。
どっちかと言えば前身であるニューエストモデルのファンですが。
しかし行き場の無い派遣工か・・・・。明日はわが身って感じですな。
ホント嫌な国になった。
投稿 月刊毎日新聞 | 2008/12/03 00:54
本当は右も左も無い。
あるのは支配する側とされる側。
権力に媚を売り自分だけ助かりたい奴らと権力に反抗したい奴ら。
「有識者」やら「専門家」の言う事を鵜呑みにして考える事を放棄した奴と 自分のロジックで考える事を止めない奴。
まっとうな奴はイデオロギーじゃ飯は喰えない。
自民党の公報部隊と化したメディアが「勝ち組・負け組み」と競争心を煽り、「グローバリゼーションだ」「自己責任だ」と追い討ちをかける。
「分割して統治せよ」とはよく言ったものだね。
本当の歌には、イデオロギーなんて必要ない。あるのはたくさんの悲哀と苦悩、そしてかすかな希望だ。権力者の走狗と化した今のメジャーな音楽に本当に心を打つものは無いね。我輩は路上や場末のライブハウスで名も知れぬ歌い手の歌に涙する観衆を何度も見ているよ。
本当に価値のあるものはテレビや新聞じゃ知る事はできないし、新しいものが良い物とは限らない。先入観に囚われずに物事の本質を見抜くのは難しいね。だからこそ得られる物に価値があるとも言えるが・・・
投稿 neuro | 2008/12/03 00:59
私もニューエストモデル、ファンですた^^
CDも買って聴き込んだし、ライブもちろっと行った記憶がある。
ソウルフラワーユニオンになってからは、聴かなくなっちゃいましたけどね。
いやーでも、野次馬さんのサイトでソウルフラワー見るとわ。
彼らなら、名古屋に行って歌うかもしんないなあ。
投稿 ずんぼ | 2008/12/03 01:01
> ホント嫌な国になった。
ここからどう立ち直れるか、どうやって朝鮮カルトや自民公明の洗脳を脱し、民主や共産、社民の罠をかいくぐってまっとうな国に戻れるか、日本人の真価が試されるのではないかな?
日本は世界に奇跡を巻き起こした国だ。奴隷根性の染み付いたB層をなんとかして自信を取り戻しさえすれば、案外簡単に立ち直れるかもね。
自ら望んで自民党や朝鮮カルトの奴隷に成り下がった奴らがどうすれば誇りを取り戻せるのか、それが問題だけどね。
投稿 neuro | 2008/12/03 01:04
音楽を利用したイデオロギーや宗教のマーケッティングって多いですね。裏にハリウッドのプロデューサーが臭います。しかし、クリスチャン・ロック・バンドなんか聞くと綺麗過ぎていけません。ドラッグも反逆性も汚れた普段着もありません。どっかで聞いたものの焼き直しばかり。まあ、売れないコペピのお上手なバンドは、その市場で食っていけてハッピィーなのでしょうか?
ダメリカのクリスチャン・ロック・バンドTop 10
http://www.youtube.com/watch?v=OJ4bS1CdfC0
投稿 FT | 2008/12/03 01:17
頭脳警察とか上々颱風とかソウル・フラワー*とか、労音系赤色バンドの成功ってのは商業音楽的な成功とは異なるものなので、一時的に人をたくさん集めても継続的な収益には程遠いし、この人らはいったいどうやって食っているのかというゲスな疑問が頭を離れません。
投稿 コメンテーター | 2008/12/03 01:31
おいらの知人のそういうバンドの末端にいる人は、三味線抱えて観光地で路傍の芸人やってます。正月とか、けっこう稼げるらしいw
ミュージシャンは日立て5万円からのギャラ取るので、たまに仕事があれば食えるよ。
投稿 野次馬 | 2008/12/03 01:37
震災で一面焼け野原になった光景が思い出されます。
あの時、多くの方に助けていただきました。ありがとうございます。
おにぎりをくれた名も知らぬ初老のおじさんの顔はまだ覚えてます。
ただ、無神経にマイクを向けてくるリポーターと屋台のオヤジが便乗して暴利のラーメンを売っていたのには殺意が湧きました。
それと村山総理の無能さにはあきれましたね。
なので社民党や旧社会党系議員は大嫌いなのです。
投稿 domu | 2008/12/03 02:48