去年11月、札幌市の女性が出産した未熟児の男児が7つの病院に受け入れを断られ、10日後に死亡していたことがわかった。NICU(=新生児集中治療室)を備えていたものの、受け入れを断った病院は2日、会見を行い、謝罪した。 去年11月15日夜、札幌市内の30歳代の女性が自宅で早産し、救急車を要請した。生まれたのは男児で、体重1300グラムの未熟児だった。女性のかかりつけの医院には、重篤な患者を受け入れる施設はなく、札幌市消防局は救急車で搬送する一方、NICUを備えた病院などへ受け入れを要請した。しかし、大学病院を含む札幌市内の7つの病院が「病床が空いていない」「医師が処置中」などの理由で受け入れを拒否した。さらに、重症の新生児を24時間受け入れるはずの市立札幌病院でさえも、受け入れを拒否した。男児は救急車の中で、一時、心肺停止状態になり、救急車の要請から1時間半後に札幌市の手稲渓仁会病院に運ばれたが、10日後に死亡した。
市立札幌病院・野崎清史経営管理部長は2日の会見で「NICUの満床が理由。大変申し訳ないことをした」と述べ、謝罪した。市立札幌病院が昨年度、新生児や母親の受け入れを拒否した件数は77件に上る。
こうした事態を受けて札幌市は、今年10月から「病院の空き状況をあらかじめ確認しておく」「産婦人科の医師の代わりに内科の医師も診断にあたる」などの対策を始めた。これについて、札幌市産婦人科医会・遠藤一行会長は、「(NICUを)運用していくスタッフが足りない。国のレベルで、北海道のレベルで考えなければならない」と指摘する。
北海道内で医療体制が最も整っているはずの札幌市で、産婦人科医療の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りになった。