ドイツのベルリン(Berlin)でアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相に迎えられるチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世(2007年9月23日撮影)。(c)AFP/DDP/AP/MARKUS SCHREIBER
【11月27日 AFP】欧州連合(EU)議長国フランスのニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領が、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世と12月に会見すると発表したことを不満として、フランスで1日に予定されていたEU中国首脳会議の取りやめを中国政府が通告した。
■国際的影響力を誇示したい中国
チベット問題を理由にEUとの首脳会談をキャンセルした中国の決断には、国際的な影響力を増しつつある中国がその力を誇示したいという思惑が見え隠れする、と専門家らはみる。
米コロンビア大学(Columbia University)のチベット専門家、ロビー・バネット(Robbie Barnett)教授は「ダライ・ラマは87年から欧州を訪問しているが、中国が多国間サミットをキャンセルするとは、これまでになく強い拒絶の示し方だ」と注目する。
中国は長年、他国の指導者たちとダライ・ラマの会見に抵抗を示しており、2007年にもドイツのアンゲラ・メルケル( Angela Merkel )首相がダライ・ラマと会見した後、中国側が独財務相の訪中を拒否するなど、過去にも同様の理由で外交行事や協議の取り止めを通告したことはある。
しかし、香港バプティスト大学(Hong Kong Baptist University)のジャン・ピエール・セバスチャン(Jean-Pierre Cabestan)教授は「首脳会議レベルのものを、中国がキャンセルしたことはない。かつてない強い立場を中国は感じており、世界に自国の基準を強要したがっている」と今回の事態を深刻視する。
■中国をいらだたせる欧州の動き
欧州では12月、中国側のいら立ちを誘うような予定が目白押しで、今回のキャンセルは中国側の怒りの表れだとセバスチャン教授は語る。
ダライ・ラマは12月、欧州数カ国を歴訪するほか、6日にはサルコジ仏大統領と会談する。17日には
人権擁護活動で貢献があった人物や団体に欧州議会(European Parliament)が贈るサハロフ賞(Sakharov Prize)の授賞式があり、国家政権転覆扇動罪で服役中の中国の人権活動家、胡佳(Hu Jia)氏(35)が受賞する。
中国国際問題研究所(China Institute of International Studies、CIIS)欧州研究センターのXing Hua所長は、中国の反応から強い欲求不満を読み取る。「(チベットの)分離独立運動の指導者と中国がみなすダライ・ラマを、(欧州)各国の指導者たちがいとも簡単に受け入れる事態にこれ以上は耐えられず、中国がキャンセルに追い込まれた状態」だという。
■「親中派」を見分けるタフな外交ゲームとも
また単なる外交シグナルという以上に、EU内部の各国間の分裂を図ろうとする意図を読み取る意見もある。「EUの列強国も一枚岩ではない。従来のEUの原則を貫く国と、中国を動揺させるべきでないと主張する国とを見分ける賭けゲームに打って出たとも言える」(コロンビア大バーネット氏)
バーネット氏は、独メルケル首相がダライ・ラマと会見した後、外交問題となったことから、独外相が5月にダライ・ラマとの会見を拒絶した例や、ローマ法王がやはり、それまでに応じたことのある会見を断った例などを挙げ、欧州の指導者周辺にみられる路線変更を指摘し、「チベット問題をめぐる(中国の)圧力外交の成果」だと語る。
しかし、相手が米国となれば中国のスタンスは異なるだろうと指摘する声もある。北京の独立系シンクタンク「世界与中国研究所(The World and China Institute)」のLi Fan研究員は「米国だったら中国側のこの反応はない。欧州は二の次だということだ。対欧州関係よりも、チベット問題のほうが重要だと中国がみなしている証拠だ」と言う。
コロンビア大バーネット教授も、米国の政権移行期に中国が今回の反応を示した点が重要だとみる。「同じゲームでもチェスどころではない、これはタフな外交ゲームだ」(c)AFP/Marianne Barriaux
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