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未熟児死亡:7病院が受け入れ拒否 札幌市が陳謝

市立札幌病院が未熟児の受け入れを断った経緯を説明する札幌市病院局の野崎清史・経営管理部長(右)ら=札幌市役所で2日、内藤陽撮影
市立札幌病院が未熟児の受け入れを断った経緯を説明する札幌市病院局の野崎清史・経営管理部長(右)ら=札幌市役所で2日、内藤陽撮影

 昨年11月、札幌市北区の30代女性が自宅で早産した未熟児が救急車で運ばれた際、市立札幌病院など7病院から受け入れを拒否されていたことが分かった。未熟児は119番通報から1時間半後、新生児集中治療室(NICU)のない民間病院に運ばれたが、既に心肺停止状態となっており、後日死亡した。

 市立札幌病院は新生児の高度医療を担う地域の中核施設「総合周産期母子医療センター」に指定されている。札幌市病院局の野崎清史・経営管理部長が2日記者会見し「結果的に亡くなられたことは誠に残念。大変申し訳ない」と陳謝した。

 市などによると、女性は昨年11月15日夜、自宅で妊娠27週の男児を早産した。救急隊が病院を探したが、NICUのある市立札幌病院、北大病院、札幌医大附属病院など5病院と、NICUのない2病院が「満床」「処置が困難」などを理由に受け入れを断った。市立札幌病院はNICU9床が満床で、新生児科の当直医は1人しかおらず、別の患者の治療で手が離せない状態だったという。

 8カ所目の手稲渓仁会病院(同市手稲区)が受け入れたのは翌16日午前0時8分。同病院にNICUはなく、市立札幌病院が翌17日、男児の受け入れを打診したが、容体が悪化し搬送できる状態ではなかったという。【内藤陽、仲田力行】

 新生児を救う「最後のとりで」がなぜ機能しなかったのか--。札幌市で昨年11月、未熟児の受け入れを拒否した7病院には、総合周産期母子医療センターに指定された市立札幌病院が含まれていた。札幌のような大都市で、しかも緊急・高度の新生児医療を担う専門施設があっても迅速な治療を受けられない現実。市病院局は2日、受け入れ態勢が不十分だったことを認めたが、未熟児が死亡した事実を1年以上公表せず、この間、どのような対策をとったのかも説明していない。【内藤陽】

 「受け入れ側としてNICU(新生児集中治療室)の人的配置が十分でなく、各病院のNICUの空き状況を確認する作業が非効率だった」。市保健福祉局の飯田晃・医療政策担当部長は2日の記者会見で対応の不備を認めた。しかし、受け入れを断った際の具体的な状況や未熟児の病状、死亡日時などは明らかにしなかった。

 市によると市立札幌病院が受け入れを断った未熟児が結果的に死亡したことを市側が知ったのは昨年12月暮れごろ。その後、市の産婦人科救急体制をめぐって市産婦人科医会が2次救急の当番制から撤退する混乱があり、市は10月から「夜間急病センター」に産科救急の電話相談に応じるオペレーターを配置する新体制に移行した。

 市は「新体制では(オペレーターが市内の)空きベッド情報を集約しているので(受け入れ拒否が)起きる可能性は低い」としているが、新体制移行後の10、11月にも計2回、市内のNICUが満床のため苫小牧市立病院に受け入れを要請する事態が発生している。

 産科救急の重症患者を受け入れる「最後のとりで」の市立札幌病院だが、市によると07年度に自宅など病院以外で産まれた新生児の受け入れ依頼88件に対し、実際に受け入れたのは68件。20件はNICUの満床を理由に断っている。9床あるNICUの今年4~10月の利用率は平均98・3%と満床状態が恒常化。市は同病院のNICUを来年度に3床か6床増やす計画で、それに応じた専任医師や看護師の確保も課題になる。

 上田文雄市長は2日、「市民に安心してもらえる体制の充実に向け、効果的な対策を進める」とのコメントを発表した。

毎日新聞 2008年12月3日 1時06分

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