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死因究明制度の実現に7つの課題

 「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」について担当者からヒアリングを行った12月1日の「死因究明等の在り方に関する検討会」(座長=前田雅英・首都大学東京法科大学院教授)で、同検討会の委員で同事業の中央事務局長を務める山口徹・虎の門病院院長は、「モデル事業を行っている側から言えば、制度として幾つか課題があるが、十分実現性があるものとして現在行われている」と、モデル事業が一定の成果を上げていることを強調しつつも、死因究明制度の実現に向けて7つの課題を示した。

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 モデル事業は厚生労働省の補助事業として日本内科学会が38学会の支援を受けて実施。2005年9月、東京、愛知、大阪、兵庫の4地域で開始した。その後、順次実施地域を拡大し、現在は札幌、宮城、茨城、東京、新潟、愛知、大阪、兵庫、岡山、福岡の10地域で実施している。

 モデル事業についてのヒアリングは、厚労省による死因究明制度の第一次試案ができた後に開かれた昨年6月27日に続いて2回目。第三次試案の具体化に向けて、モデル事業から新制度へのスムーズな移行ができるかどうかに委員の関心が集まった。

 山口氏は、モデル事業の実施によって見えてきた課題として、▽低い解剖率▽対象となる事例の範囲▽受付体制▽遺族からの調査依頼▽評価を行う医療従事者の確保▽評価に要する時間▽再発防止への提言―の7つを挙げた。

 「低い解剖率」に関しては、第三次試案では原則として、遺族の同意を得て解剖が行える事例について、医療安全調査委員会(仮称)が調査を行うこととされている。しかし、山口氏によると、モデル事業では調査依頼があったものの受け付けに至らなかったケースが150件あり、その約3分の1に当たる47件は解剖に「遺族の同意が得られなかった」ことが理由だった。このため、山口氏は、一般国民の解剖への理解を深める取り組みが重要と指摘した。
 また、「対象となる事例の範囲」について、第三次試案で提案されている新制度が、医師法21条に基づく警察への届け出が必要となる事案を調査対象としているのに対し、モデル事業では対象外としていることを問題視。新制度の施行前に、医師法21条に基づき警察に届けられた事例の調査もモデル的に行う取り組みが必要ではないか、と提案した。
 「評価に要する時間」については、モデル事業では、事例受け付けから患者遺族・医療機関への説明会までを6か月以内に終わらせることを目標としていたが、説明会までに要した時間の平均は10.5か月。このため、山口氏は、診療行為と死亡との因果関係を分析した評価結果報告書を作成する評価委員会の委員のうち、臨床評価医などの負担を軽減することや、事業の事務局の業務手順を効率化する必要性を訴えた。また、同委員会の委員が事業に初めて参加した場合、調査期間が長引く傾向があるため、評価に習熟した委員の育成を計画的に進める必要性を指摘した。

 厚労省によると、今回のヒアリングは、取り組み状況の報告にとどまった前回のヒアリングとは異なり、第三次試案の具体化を前提に課題を洗い出すのが狙い。同省では、「前向きに進めていきたい。法案についてもなるべく早く出せるよう準備したい」と話している。


更新:2008/12/02 20:54   キャリアブレイン

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