アフリカ・ソマリア沖で相次ぐ海賊被害を受け、政府は二十日、海上自衛隊の護衛艦を派遣するための「海賊行為防止活動特別措置法案」(仮称)の素案をまとめた。自衛官の正当防衛に加え、海賊が武力で抵抗した場合の武器使用を容認する考えを打ち出し、護衛対象に外国船も含めた。
政府は来年の通常国会での法案提出を目指す考え。しかし集団的自衛権の行使や海外での武力行使を禁じた憲法九条との整合性をめぐり論議となるのは必至だ。衆参両院の「ねじれ国会」もあり、成立は見通せない。
素案によると、タンカーや民間商船などの安全確保と海賊行為の阻止が目的。各国に海賊への対処行動を求めた今年六月の国連決議を法的根拠としている。
活動範囲は「日本領海とソマリア沖」と規定し、自衛隊部隊による活動として(1)同海域を航行する船舶の監視や伴走(2)海賊船への停船命令や立ち入り検査―を例示。周辺海域で戦闘行為が発生した場合は、活動を中断して避難する。
また派遣期間や活動範囲などを定めた実施計画を作成し閣議決定。政府に対し、計画の変更や活動終了時の国会報告を義務付けている。
武器使用については「海賊行為防止活動の実施に対する抵抗を抑止するため武器を使用できるほか、自衛官は、自己保存のための武器を使用できる」と明記した。
特措法を含めた海賊対処の新法をめぐっては麻生太郎首相が政府、自民党に検討を指示。国連海洋法条約に基づいた国内罰則規定の新設も検討されている。
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