状態の良いワインを輸入する問題点

最近ではインポーターがワインの状態に関して気遣いする傾向が強くなってきました。裏ラベルにそのことを明記したり新しく設立されたインポーターほどその傾向があります。
では実際にコンディションが良くなっているのでしょうか。実はそうでもありません。私もインポーターの人にいろいろ聞いて回ったのですが、今ひとつのインポーターでもかなり真剣に輸入しているのです。ではどこでそんなに差が付いてしまうのか。私たちは輸入されてからそれほど時間のたっていないもしくは輸入されたてのワインを購入することが多いのですが、それで差が付いてしまっていることが多くこれは間違いなくワイン生産国内での輸送に問題があるのだと思います。もう一つあるとすればコンテナの違いとコンテナへの積載量の違いでしょう。どうもこの2点が引っかかってきます。
今後の問題点はインポーターの方の意識です。今の輸入方法が最高だからこれ以上の改善方法はないと思ってしまうとワインの状態は良くなりません。ラシーヌやクラモチ、フィネスのワインがどうしてあんなに状態が違うのでしょうか。実際試飲してみると明らかな違いがあるのです。そのことに気づいて欲しいものです。

ワインの管理

私たちもセラーでワインを管理する際広い部屋で管理する場合は必ず箱に詰めたままにします。裸でワインを置いておくといくらセラーの中でも微妙な温度変化にさらされるからです。人の出入りが多い場合更に温度変化の幅が大きくなります。また空気循環の問題で冷気が当たりやすい場所と当たりにくい場所での温度の違い等いろいろな問題が出てきます。比較的大きな部屋でワインを管理する際は2重に気を使ったほうがいいことは間違いのない事実です。

状態の良いワインの特徴

状態の良いワインは比較すればすぐわかりますし、なれれば判定しやすい物です。しかし実際はプロでもわかっていない領域でもあるので簡単な目安をお話ししたいと思います。
まずバックヴィンテージやピノ・ノワールの弱いワイン以外は状態さえ良ければそんなに簡単にワインが劣化しません。抜栓後の時間経過でワインがどのように変化するかで1つの判定が出来ます。落ちやすいワインほど状態に問題ありです。しかし全てのワインに当てはまる基準ではないことをご理解下さい。
第2に状態の良いワインは必ずフレッシュ感があります。ブルゴーニュの場合状態さえ良ければ、かなり長熟な造りでない限り、のっぺりとした感じやゆるくなってしまっていることはありません。必ずそこにはフレッシュ感と細かい要素が沢山あります。2002年のブルゴーニュのワインは非常に綺麗な造りなので判定にはぴったり。面白みのないワインだな〜ちょっとうすいな〜などと思ったら状態に問題ありです。ワインは必ず感じさせてくれる物を多く持っています。コンディションが良くないとそういった要素がどんどんなくなっていくのです。

インポーターに関する見解

インポーターに関しての見解は常時更新いたしますが頻繁に購入していないインポーターに関してはその後の変化について未確認の部分があることをご了承下さい。

ラシーヌ

ラシーヌは、ル・テロワールの設立時のメンバーである合田さんが設立したインポーターである。初期の頃のル・テロワールのように現在日本においてはこれ以上ないと思われるほどの状態のワインを輸入している。アイテムに関しては、一般的な有名銘柄ではなく既成概念にとらわれない最先端の雑味感のない品質重視のワインが多い。ル・テロワール時代から考えてみても現在の品揃えはかなり良くなっていて所謂外れと感じるものもほとんどない。問題といえばコンディションが良すぎるために本来の良さが現れるまでに時間のかかるワインが一部あるためにそのワインの本質をなかなか理解できない場合があること。経験則から言って今あまり美味しく感じなくても置いておくことでほとんどのワインが必ず美味しくなるという確信がある。知名度の低いワインが多いために売り手側の度量が試される場合が多い。
全体的なワインの特徴としては、雑味感のなく質感の良いワインが多い。ブルゴーニュやイタリアなどの一部には若い内は理解しづらいワインもあるが、これは熟成を待てば解決するはず。
ワインに関する調査力と造り手とのつながりには図抜けたものがあり私がまだ理解できないような部分も多々あり。こんなに海外にしょっちゅう行っているバイヤーもないのではないだろうか。ワイン業界にはやっかみも多いようだが、ワインに対して一番真摯に考えているインポーターであることは間違いない。
インパクトの強いワインが好きな方にはけっしてお勧めできないワインが多いが、ワインに関して先入観の少ない女性には間違いなく受けが良い。実際お店で使っていて徐々にお客様の反応が変わっていくことを感じている。

フィネス

フィネスは富士発酵から独立したインポーターで、内容的には全く考え方が変わっていない。ワインのコンディションに関しては昔から定評があり非常に素晴らしい。社長営業を含めかなり保守的で冷静。信頼度が高い。造り手との信頼関係をとても重視しているらしく一度つきあい始めた造り手のワインは滅多なことで止めることがない。ブルゴーニュに強く今の日本でこれだけのブルゴーニュのアイテムを持っていてコンディションがよいインポーターは他にない。
アイテムに関しては全てのワインを気に入っているわけではないが、かなり高い比率で使いたいワインが多い。ここが一時輸入したアルマン・ルソーなどはコンディションがよいとここまで美味しいのかと驚かされたものである。他の地域のワインの中にもかなり注目できる造り手もいる。
私の希望としては、ブルゴーニュのアイテムをもっと増やして欲しいということ。つい最近ではセラファンを扱うようになったことが嬉しい。今まで輸入されていたセラファンがいかに酷い状態だったかを実感できる。

ヴィノラム

ヴィノラムは長谷川酒店にいた梅原さんがソムリエの野田さんと設立したインポーター。設立時からコンディションをかなり意識していたが最初はどの程度なのか心配もあった。しかしこの間の試飲会、実際ワインを購入してみたところ凄くコンディションがよい。これは間違いなく日本でトップクラスであることは間違いない。アイテムに関しては、正規輸入のものと平行物のバックヴィンテージのワインなどがあるが、どちらをとってもここまでコンディションがよいのには驚いてしまう。ボルドーのワインなどはここ意外のものは使いたくなくなってしまうほど。バックヴィンテージのブルゴーニュなども最も信頼がおける。正規輸入物もアイテム的に興味を持つものが多い。
ラシーヌとは違い、比較的売れ筋の商品が多く評論家などに注目されているワインが多い。非常に重宝している。

クラモチ

クラモチはアメリカワインに特化したインポーター。コンディションの良さに関してはまさに抜群。数あるアメリカワインのインポーター中でここほどコンディションの良いワインを引いているインポーターはいない。赤道を通らないからといって未だにコンディションに無頓着なインポーターが多い中、ここまでコンディションが違うとアメリカワインの本来の魅力がわかるというもの
アイテムに関しては今までの単純な造りのアメリカワインを見直すきっかけとなるような質感の高いものが多い。無名に近いものもあるが、ロキオリなどのとっておきの造り手のものもある。どのワインもアメリカの中では注目度の高いワインが多く今後もかなり期待できるインポーター。クラモチさんの人柄も良くマニアックで本質を見抜く目は尊敬できる人。

ザ・ヴァイン

ローヌなどの南仏ワイン専門のインポーター。コンディションが素晴らしくこれからの期待度が高い。今までローヌ中心のインポーターは数多くあったが、ここまでコンディションがよいインポーターはまずなかった。このようなコンディションでワインを輸入してくれることで南仏のワインを見直すきっかけになる。
アイテムに関してはどんどん良くなっていてインパクトの強い濃いワインというよりも非常にエレガント系の優しいワインが多い。元々個人的にはシャトーヌフ・デュ・パフのワイン以外はそれほど興味がなかったのだが、使ってみたワインやこれから使いたいワインが多い。今後かなり期待がが持てるインポーター。

サンリバティー

サンリバティーのワインは輸入はラシーヌと同じ物がほとんどなので倉庫以外に関しての信頼度はかなり高い。アイテムはそれほど多くないがかなり魅力的な品揃え、特にエグリ・ウーリエやレギュリエールなどが魅力だ。比較的世間ではマイナーなインポーターなので扱っているお店が少ないが信頼度はかなり高い。

ヴィナリウス

日本のワインのコンディションが良くなるきっかけとなったのがこのインポーターが解明する前のエノテカ・ワイン・セレクション。今は亡き北岡さんがはじめたこのインポーターはその当時としては例外的とも言える素晴らしいイタリアワインを輸入していた。この当時ここまで優れたコンディションのワインはなかったため私でさえも逆に違和感があったほどだ。アイテム的にも素晴らしくある意味時代が早すぎたとも言えるインポーターであった。現在のヴィナリウスはアイテム的に以前ほど魅力がなくなったが、コンディションに関してはかなり良い。だが最近若干低温酸化しているワインが見受けられのと、ラシーヌと比べると若干劣るような気がする。原因は色々とあるようだが、倉庫での管理温度が低いこととイタリア国内での輸送に若干の問題があるように感じる。
アイテム的にうちのお店でやっていることと今ひとつマッチしないので最近の購入は控えているが、以前買ったワインがまだ沢山あるので重宝している。最近は以前ほど価格も高くないので使いやすくなっていると思う。コンディション的にも細かく言えば若干の問題はあるものの他のインポーターと比べれば格段に良いことは確か。

オーデックス・ジャパン

オーデックスジャパンはフランスワインに関しては担当者のおかげでかなりコンディションがよい。アイテム的にも魅力的で2000年ヴィンテージ以降はかなり購入した。イタリアワインや、スペインワインは納得できるコンディションではないので購入はほとんどしていない。最近ではホセリート社のハモンイベリコの輸入もはじめ非常に重宝している。社長の森さんは今後は地中海ワイン、つまり南仏やイタリアスペインのワインに特化していくつもりらしい。
ここの商品は魅力的なだけに今後コンディションに関してもっと力を入れて欲しい。フランスの担当者が止めてしまったため今後のフランスワインのコンディションに関しては若干不安がある。今後の購入に関してはじっくりと見極めたいと思っている。

三共化学

三共化学はフィネスとも仲が良くコンディションはまずフィネスと同等と思って良い。社長の小林さんは半分趣味とでもいった感じで造り手とのつながりの中で地味に仕事をしているようである。アイテム的には若干魅力ないものもあるがトロボーやイヴ・キュイエロン、ベルナール・デュガなどかなり魅力的なアイテムが揃っている。最近は購入していないが実はきっかけがなかなかないだけで非常に購入したいワインが沢山ある。
現在は残念ながら諸般の事情により倉庫の変更や輸入方法の変更等によりコンディションにかなり問題があるとの情報が入っている。

ル・テロワール

現在はもう営業を止めてしまっているが、ワインはまだ流通しているしうちも所有しているために言及しておきたい。合田さんがいた頃のコンディションは非常に素晴らしかったが、その後のワインのコンディションは酷くはないにしても以前のワインのような魅力はなくなってしまっている。営業体制も変わり投げ売りのようにたたき売りしたワインが市場に出回っている。元々選別しているワインの多くが繊細なワインが多いだけに若干でもコンディションが悪いとその魅力の大半を失ってしまうだけにバランスが悪くなっているワインが多い。そうした理由で合田さんがやめてしまったあとのワインは購入していない。
現在は会社を解散し営業はしていない。合田さんがやめて以降のロットは酷い状態なので買ってはいけない。

ファームストン

ファームストンはオーストラリア専門のインポーターでヴィナリウス出身の担当者がいるためにコンディションが非常に素晴らしい。一部地域のワインに関しては問題のあるものもあるが、この地域は一部リーファーコンテナなどの設備的な問題もあるのでこのインポーターの姿勢の問題とは別の要因がある。
このワインの問題点はアイテムにある。オーストラリアワインはさすがにまだまだこれからのものも多く世界的な観点から品質的に比べると価格的に見劣りしてしまう分がどうしてもある。非常に魅力的なアイテムも揃いつつあるので今後かなり良くなっていくことは間違いない。ここのワインのメインは今までのオーストラリアらしいと思われている濃厚でヘヴィーな雰囲気のワインではなく西地区のワインが多いために非常に上品系のワインが多い。最近はあまり使っていないが、いずれまた商品を見極めながら使ってみたいと思っている。

エノテカ

エノテカは規模が大きくコンディション的に非常に印象の悪い時期が続いたが、最近ここのボルドーを何本か飲む機会があり驚いた。コンディションが素晴らしいのである。ピノ系は飲んでないので何とも言えないが、ボルドーに関してはかなり良いことは確かだ。輸入に関してはまず問題がないようだ。規模が大きい会社なので店舗での管理棟には当然不安が残る。要するにネットでの購入であれば、管理等の不安要因が少なくなるのではないだろうか。さすがにうちではエノテカのワインは扱わないが、最近はルイ・ロデレールなども扱うようになっているため、コンディションを見極めながら購入も考えても良い時期にきているのかもしれない。

ワイン・ブレス・インターナショナル

いわゆるネットで有名なヴェリタスである。輸入元直販というある意味とても理想的な環境にある会社で個人が購入するワインという観点で見れば価格競争力に優れた会社といえる。実は以前からいくつか購入してそのコンディションを見ているのだが、正直言ってうちで扱うには満足いく状態ではない。状態に関してはブルゴーニュもローヌもボルドーも同じようにゆるい感じがある。ヴェリタス直輸入物以外も扱うために気をつけないとコンディション面でどうかという物もある。ただ個人が購入するという観点で見ると合格点レベルのような気がするが例えばブルゴーニュの場合これをブルゴーニュの本当に美味しいワインと思ってしまうとブルゴーニュがかわいそう。それだけ個人的にワインを購入することが難しい現状があるとも言えるが、、。

2006/07/15更新

ラシーヌ
★★★★★
フィネス
★★★★★
ヴィノラム
★★★★★
クラモチ
★★★★★
ザ・ヴァイン
★★★★
サンリバティー
★★★★
ヴィナリウス
★★★★
トーメン
★★〜★★★★★
オーデックスジャパン
★★-★★★
三共化学
★★
ファームストン
★★★★
ヴーヴクリコジャパン
★★★〜★★★★
大塚食品
★★★★
八田
★★★
サントリー
★★〜★★★
ヴァン・パッション
★★★
デプトプランニング
★★★〜★★★★
フードライナー
★★
メルシャン
★★
宝酒造
★★
稲葉
★★
ピーロートジャパン
★★★
野村ユニソン
★★★
ミリオン商事
★★★★
ヴァイ&カンパニー
★★★
カリフォルニア・トレーディング
★★★〜★★★★
アルカン
★★★
パシフィック洋行
★★★
ワイン・ブレス・インターナショナル
★★★
エイエムジー
★★〜★★★
ミレジム
★★〜★★★
ル・ヴァン・ヴィヴァン
★★★
ラック・コーポレーション
★★
エノテカ
★★〜★★★★
イーエスジャパン
★★★〜★★★★
土浦鈴木屋
★★★
やまや
★〜★★
ヴィントナーズ
★〜★★