ページ内ジャンプ:

アレゲなニュースと雑談サイト

reoによる 2008年12月02日 10時00分の掲載
さまざまな意味での多様性部門より。

capra 曰く、

ダウン症候群は 21 番目の染色体が 3 本になり、トリソミーと呼ばれる染色体異常を起こすことで発症する先天性疾患群である。マウスでも 16 番目の染色体が 3 本になることがあり、どちらの場合もグリア細胞が生成するニューロンの発達に必要なタンパク質の生成量が少ないという異常がみられる。トリソミーを持つ人間やマウスのニューロンを培養し、このタンパク質を構成する NAP と SAL とういペプチドを加えると、そのままでは変質してしまうニューロンを保護する働きをすることが分かっている。
この研究を踏まえ、米国立衛生研究所の研究チームがダウン症の出生前治療に関する実験を行い、論文を発表した(論文要旨)。トリソミーを持つ個体を身ごもったマウスの妊娠中期に同ペプチド 2 種を注入したところ、生まれたマウスは触覚刺激への反応や、掴む能力などにおいて通常のマウスと同等の発達がみられた。また、トリソミー個体のグリア細胞では過少生成されるタンパク質 ADNP も正常値を示した。研究チームは、この結果はどちらもダウン症の影響をいくらか排除できたことを示唆しているとしている (本家記事, New Scientist の記事) 。
この出生前治療が人間でも有効かどうかは未だ分かっていないが、研究チームは出生前治療によってグリア細胞のタンパク質生成異常を治すことが可能かもしれないと期待している。現在研究チームは、生まれたマウスの学習障害が軽減されているか引き続き調査を行っているとのこと。

ダウン症候群に関する議論にはいろいろ敏感な側面がある。上記 New Scientist の記事と同日に掲載された「ダウン症候群への新たな受容」という記事では「ダウン症の子供を持つ親は、"完全なものを選ぶこと"、"障害を避けること"、"多様性を受け入れること" の線引き議論の最前線にある。出産前検査がより広まる事や、特に今回のような研究が進む事により、ダウン症を患う人々がより一層少数派になることを親たちは恐れている」と述べている。良いことなのか悪いことなのか、政策としてどうあるべきかを決めるのは未来の人間にまかせて、今は選択肢が増える事を見守ろう。

関連ストーリー

表示オプション しきい値:
  • リンク先 (スコア:1, 参考になる)

    Anonymous Coward : 2008年12月02日 10時23分 (#1465683)
    タレコミの「論文要旨」でリンクされてるのは、過去に行った実験、NAPとSALがヒトの細胞にも効く、という実験に関する論文ですね。
    今回の記事の論文はこちら [greenjournal.org]。

    ちなみにNAPというのはタレコミ中のADNPの一部分です。

    #アレたまで見かけたとき、いくつか考えてたことがあったはずなんだけど、もう忘れてしまった。
  • ikotom (20155) : 2008年12月02日 11時00分 (#1465708)
    エリザベス ムーン (著), を思い出した。
    こっちは自閉症で、SFにジャンルされる話ではあるけれど。
    障害者自身の視点による話という繋がり?で、アオリではアルジャーノンと類しているが読後の印象は全くの別物でした。
    個人的には こちらのほうが好きかも。
  • Re:患う? (スコア:1)

    reo (4042) : 2008年12月02日 10時18分 (#1465677) ホームページ
    ご指摘ありがとうございます。修正しました。
    読み辛くなることを避けるため、修正前の記述を line-through などで残さないことをお許し下さい。
    --
    Hiroki (REO) Kashiwazaki
  • 3個のコメント が現在のしきい値以下です。