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 医療への信頼
    

 【早産男児、7病院拒否 10日後死亡 札幌で昨年11月(12/02 07:16)】 札幌市内の三十歳代の女性が自宅で早産した未熟児が昨年十一月、七病院に「満床」などを理由に受け入れを断られ、一時間半後に新生児集中治療室(NICU)のない市内の病院に搬送され十日後に死亡していたことが一日、分かった。道内で医療体制が最も整備されているはずの札幌で、生まれてくる未熟児の生命が危機にさらされている現実が明らかになった。専門医はNICU不足を指摘する一方「未熟児はすぐに低体温、低酸素状態となる。もっと早くNICUで治療できていれば助かったはずだ」としている。…(北海道新聞)全文  
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【写真】10月4日の土曜日に体調不良を訴えた東京都内の妊婦(36)が都立墨東病院(墨田区)など7カ所の医療機関に診療を断られた後、最終的に救急搬送された墨東病院で赤ちゃんを出産後、脳内出血の手術を受け、3日後に死亡した。赤ちゃんは無事だった。写真は妊婦が救急搬送された都立墨東病院(共同)

 【南日本新聞のコラム】 …東京都では複数の病院で受け入れを断られた妊婦が亡くなった。「都にも責任がある」との舛添要一厚生労働相の発言に、石原慎太郎都知事は「医師の数を増やすのは国の責任だ」と反論したという▼時に地方を軽視するような「強者の論理」をのぞかせる石原都知事だが、今回は鹿児島からも声援を送った人がいたのではないだろうか。主に医療費を抑えるために、医師の数を抑制してきたのは国にほかならない…(11月15日付「南風録」)全文

 【河北新報のコラム】 仙台オープン病院救急センター長の茂泉善政さんは5年前、出張先のフランス・ニースで肝を冷やした。夕食後、気分が悪くなりホテルロビーのソファで寝込んでしまった▼見かねたホテルマンが慌てて救急車を呼んだが、茂泉さんは搬送を断った。単なる過労であることを認識していたせいもあるが、理由はほかにある。それは「お金がかかるから」▼茂泉さんによると、公的機関が運営する救急車が無料なのは先進国では英国と日本ぐらいのもの。民間の救急車も活躍しており、パリでは時間帯によって、4万―6万円も取られるという▼翻って日本はどうか。年間524万件出動しているが、約52%が軽症という消防庁のデータがある。重症患者の「たらい回し」ばかりが問題になるが、背景には雑務に追われる救急医の疲弊も横たわっている…(11月9日付「河北春秋」)全文

 【四国新聞のコラム】 これだけ賛辞を浴びると、わが事のようでうれしいような、落ち着かないような。カンボジアの首都プノンペンから訪れた医師、オク・ナリスさんとソク・サムアーさんは、それほどまでに感心してくれた。かの国の救急システムはまだ立ち上がったばかり。救急車もろくにないほどだ。そこで2人は先進地・日本から学ぼうと、国際協力機構(JICA)や県の招きを受けて約1カ月間、県立中央病院や高松市消防局を見て回った。もちろん機材の充実にも驚いたが、「一番感心したのは病院と救急車の連携がよくできていること」とナリスさん。…(11月7日付「一日一言」)全文

 【福井新聞のコラム】 …東京の妊婦が7カ所の医療機関で診療を断られ出産後に亡くなった。昨年8月には奈良県の妊婦がたらい回しで死産したばかりだ▼さらに驚くべきことに、今回は地方でなく巨大都市・東京で、しかも緊急対応の指定医療機関で起きている。その病院では産科医の退職が相次ぎ、当直は研修医1人だけだった……ことわざに「子に過ぎたる宝なし」という。家族の笑顔の根源は「安心して産める」環境あってこそである。(10月23日付「越山若水」)

関連情報 
 7カ所に診療断られ妊婦死亡 脳内出血、赤ちゃんは無事(共同通信)
 『みんなギリギリ』墨東病院 産科医不足浮き彫り(東京新聞)
 妊婦死亡、当初脳内出血分からず かかりつけ医と食い違い(共同通信)
 救急受け入れ情報検索に不備 更新義務は最低1日2回(共同通信)
 7病院から直接聞き取りへ 厚労省(共同通信)
 東大病院も受け入れ断る 拒否8病院に、満床理由(共同通信)

 【47コラム】 総務省消防庁が発表した、昨年の救急搬送受け入れ状況に関する調査について、各地の結果がどうだったかというニュースが「47NEWS」加盟社サイトにいろいろ掲載されている。
 
 中には47回も拒否されたケースもある。拒否の理由は「医師不在」「専門外」が多いという。最近の小児科医不足も影響していると思われる。

 それにしても、こうした事実が国民に医療への不信感を植え付けていることは間違いないだろう。一部の開業医らの富豪ぶりや、脱税などの違法行為が明るみに出ることが不信感に輪をかける。

 いまはほとんど見られなくなった医師像を思い起こさせるのは、小津安二郎監督の名作映画「東京物語」(1953年)だ。尾道から上京してきた主人公夫婦の長男は東京・荒川近くで開業医をしている。上京の翌日、両親を東京見物に案内しようとしていると、具合の悪い息子を抱えた父親が往診を頼みに来る。「うかがいましょう」。長男は即答し、両親に「ちょっと気になる患者があるんです」と説明。見物は取りやめになったことを伝える。一緒に連れて行ってもらうつもりだった孫は駄々をこねる─というストーリー展開だ。
 
 映画のほかのシーンを見ても、この長男の家は、貧しいわけではないが、生活はかなり質素で、最近の開業医のイメージとはだいぶ違う(もちろん、当時も豊かな医師はいたのだろうが…)。それはたぶん、国民健康保険の施行(1959年)の前と後の違いなのではないだろうか。一般的に、戦後日本の医師は国民健康保険で豊かになったといわれているはずだ。

 それとともに、医師のイメージは変わり、患者の医療への信頼も変化した。「東京物語」の長男のような医師をいま都会で探すことは難しいだろう。それは時代の変化かもしれない。では、現代に適した医療の改善策はあるのだろうか?(2008年3月12日 「47NEWS」スタッフ・小池新)

新聞社のコラムから
 四国新聞 7月5日付「一日一言」 東奥日報 6月26日付「天地人」 四国新聞 3月26日付「一日一言」

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