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社説:温暖化会議 最終交渉に向け論議深めよ

 今年から始まった京都議定書の第1約束期間は2012年に終了する。13年以降の「ポスト京都」の枠組みは、09年中に作りあげなくてはならない。

 残すところあと1年。ポーランドで開幕した国連の気候変動枠組み条約第14回締約国会議(COP14)は、最終交渉に向けた重要な通過点だ。

 世界的な金融危機の影響も懸念されるが、温暖化対策は長期的な視点で取り組むべき課題である。対策の遅れが、さらなる危機を招くことのないよう、着実に議論を前進させることが大事だ。

 日本は、G8議長国として「2050年までに世界の温室効果ガスを半減させる」という長期目標で合意することをめざしている。必要最小限の目標だが、ただ単にこれを求めても、途上国が反発することは目に見えている。「まず、先進国が中期目標を示すべきだ」と主張する途上国を、どう説得し、巻き込んでいくか、戦略が必要だ。

 欧州連合(EU)はすでに「2020年までに90年比で20%の削減」という中期目標を掲げている。日本は11月から検討を始めたところで、今回は具体的数値に踏み込めない。

 科学者グループである気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、気温上昇を2度以内に抑えるには先進国は2020年までに25~40%の削減が必要だと指摘している。これを念頭に、積極的な姿勢を示すべきだろう。

 削減目標を設定するに当たり、日本は「セクター別アプローチ」を強調している。鉄鋼や電力などの部門ごとに指標を設け、削減可能量を積み上げ、国別の削減目標の基礎にしようという考えだ。

 エネルギー効率など、公平性の高い指標を取り入れる必要はある。ただ、国別総量目標の策定には積み上げ方式だけでは不十分であり、考え方を整理して示すことが重要だ。

 京都議定書で削減義務を負っていない途上国自身の位置づけも重要課題だ。途上国にも中国やインドのように急速な経済発展を遂げ、温室効果ガスを大量に排出している国がある。これらの国が削減しない限り気候の安定化は望めない。

 日本は、途上国を区分けし、主要な国には拘束力のある目標を設定することを提案している。先進国の責任は明確にすべきだが、途上国も国際的な責任を果たすべき時にきている。先進国は、技術協力や資金援助などを通じて途上国を説得していく必要がある。

 京都議定書から離脱している米国は、オバマ次期政権で温暖化対策も大きく舵(かじ)を切るはずだ。今回の会議に直接影響しなくても、次期枠組み作りには大きな影響力を持つだろう。新たな欧米体制に取り残されることのないよう、日本も本腰を入れて取り組む時だ。

毎日新聞 2008年12月2日 東京朝刊

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