文部科学省が20日に公表した児童・生徒の問題行動調査で、過去最高の発生件数となった暴力行為。九州・山口では福岡県の増加が目立つ。前年度より減ったとはいえ、いじめも後を絶たず、教育現場は「将来への不安や人間関係のストレスが積み重なっているのでは」と子どもたちの現状に危機感を強めている。
授業妨害が続き、3月と7月に生徒2人が傷害容疑などで逮捕された福岡県田川郡内の中学校関係者(47)は「最近はかっとすると抑制できない子が多く(暴力行為が増えている)実感があった」と深刻に受け止める。
同県内の40代の男性教諭は、将来への不安や認められない不満をまき散らし、物や人にぶつける“戦車型”が目立つとし「周囲も影響されてグループ化するケースがある」と指摘する。
「むしろ目立つのは言葉の暴力」と言うのは、佐賀市内の小学校に勤務する女性教諭(51)。「うざい」「死ね」など友達に対する言葉が「きつくなっている」と感じており、「自分の考えや意思をうまく伝えられず、周囲に気を使い過ぎる子が増えている」と話す。
いじめも楽観できない状況が続く。熊本県は1000人当たりの認知件数が全国ワースト2の32.2件。ただ、県教委の木村勝美義務教育課長は「数を問題視すると、学校現場が実態を隠してしまう。丁寧に把握した結果」と冷静に受け止める。いじめの解消率は94.6%で、全国平均79.7%を上回り「県独自のアンケートや24時間の電話相談など早期解消に努めている」と強調した。
同1.7件と九州・山口で最少だった福岡県教委も「必ずしもすべて発見できたわけではない。件数にかかわらず、解消への取り組みが形骸(けいがい)化しないようにしなければ」と気を引き締める。
福岡教育大の横山正幸名誉教授(児童心理学)は、暴力行為について「仲間と遊ぶ機会が減り、常にストレスを抱えている。人とのかかわり方や人の痛みへの感受性、我慢する力がうまく育たず、暴力となって表れている」と分析。いじめに関しては「学校の中の課題としている限り解決しない。幼いときから地域社会の中で共に遊ぶ、そういう家庭や地域のかかわりこそ重要」と話した。
=2008/11/21付 西日本新聞朝刊=