道路特定財源の無駄遣い批判などを受け、国土交通省が道路整備に対する姿勢を大きく転換した。今後の道路整備の基になる需要予測を初めて下方修正し、これを受けた二〇一二年度までの五年間の整備方針を示す中期計画の骨子を公表した。
参院で多数を占め発言力が増した野党が、道路予算の無駄遣いや需要予測の甘さを厳しく指摘したため、予算確保を優先するような従来の手法を変えざるを得なかったとみてよいだろう。「ねじれ国会」の一つの成果かもしれない。
財政難の折である。道路予算は抑制し、需要を厳格にチェックしながら選択と集中を徹底していく必要がある。
今回の中期計画作りは迷走が際立った。昨年十一月に国交省が示した素案では、公共事業縮小の流れに逆行するように十年間で六十五兆円の事業費がいるとした。しかし、野党から批判を浴びると、一気に五十九兆円に減額した。
さらに計画の前提となる交通量予測も問題になった。「交通量は将来も増え続ける」と国交省は予測したが、古いデータを使っていた事実が判明した。建設・維持費と走行時間短縮などを比べる費用対効果の分析の甘さも突かれ、計画を五年に短縮して作り直すことになった。
計画の信頼性は大きく揺らぎ、国交省に対する不信感も強まった。自業自得としか言いようがない。
結局、交通量予測は少子高齢化などを踏まえ初めて減少予測に転じ、今後は毎年0・1%前後の減少を続けるとした。〇二年の前回予測では二〇年まで増加が続くと見込んでいた。新たな予測では、二〇年の交通量は前回予測に比べ約13%減と大幅に下方修正された。
整備に必要な事業費は、来年度から道路特定財源が一般財源化されるのに伴い盛り込まれなかった。国交省は計画の骨子に「徹底したコスト縮減に取り組む」と明記し、四車線ではなく二車線の高速道路を増やすなど効率的な道路整備を進めていく方針を示した。地域の実情に即した柔軟な対応が望まれる。
今後は地方版の中期計画も策定される。経済環境の悪化により、地方では景気対策として道路整備の促進を期待する声も聞かれるが、整備後の維持管理費などを考慮すると、そういう発想はもうやめるべきだろう。
必要な道路の優先順位をつけ、限られた予算を重点化して有効に使ってもらいたい。二十年、三十年先の地域づくりを踏まえ、住民に対し説得力のある計画を示すことが大切だ。
市区町村への「丸投げ」や、ばらまき批判などで迷走した総額二兆円の定額給付金について、総務省はようやく制度の概要を決め地方側に提示した。
二転三転した所得制限は制度上は設けず、原則として全世帯が受け取ることができる見込みだが、依然としてあいまいさが目立つ。さらに支給対象とした外国人の所在把握など多くの難題が指摘され、混乱の火種は残ったままである。
給付額は一人一万二千円で、六十五歳以上と十八歳以下はそれぞれ八千円が加算される。支給は世帯主の口座に振り込む方式を主とし、現金を手渡す方式も認めた。
給付対象者の所得制限は「設けないことを基本」として全世帯給付を想定した。ところが、千八百万円を下限にした給付制限は市区町村の判断ででき、高額所得者に辞退を呼び掛けることも可能とした。
政府としては、どうしてもばらまき批判を避けたい苦肉の策だろう。判断を委ねられた地方には、見え透いた責任逃れとしか映るまい。
ほかにも課題は山積している。基準日から支給までの間に離婚があり世帯が分かれた場合、どうするのか。外国人登録をしている人が、登録原票を残したまま帰国したケースはどう対応するのか。ホームレスやネットカフェ難民らの所在確認ができるのか。振り込め詐欺に悪用される懸念もある。
鳩山邦夫総務相は、定額給付金の姿を「シンプル、さわやか、全世帯」と表現した。どこがシンプルでさわやかなのか、開いた口がふさがらない。
関連法案は来年一月の通常国会に提出される予定だ。必要性も含め、現場で混乱が起きないよう課題を徹底的に議論する必要がある。
(2008年12月1日掲載)