のんの目の前にはずらーっと並んだバレー部の仲間とカオリン。

「・・・という事で明日には提出しなきゃなんだ。だから今日凄く頑張んなきゃいけないの。
だから、その・・・ホントごめん!昨日、明日も来るって言ったけど、皆でバレーやろうって言ったけど、ホントにごめんなさい!」

頭を下げて五秒。誰も何も言わない。やっぱ怒ってるかな、当たり前だよね。
恐る恐る顔を上げて片目を開いて様子を見る。
・・・ん?アレ?なんで?
完全に顔を上げたのんの目に映ってるのは今にも噴き出しそうな皆の顔。何?のん、何か変な事言っちゃった?
首を傾げた途端何かスイッチが入っちゃったのか、皆してギャハギャハと笑い出した。
一年生も二年生もカオリンも皆が笑ってる。のんだけポツンとわけわかめ。

「ぷはは何それのんちゃん今幾つ?」
「先輩しっかりして下さいよー!!」
「つーかなんで高校生で宿題よ、笑えるんだけど」
「ハハハ、いいじゃん保田先生と居残り掃除!!」

皆があまりにも笑うもんだから申し訳ない気持ちでいっぱいだったはずなのに何だかもの凄く恥ずかしくなって、逃げ出したくなった。
でも逃げちゃダメだよね。だって皆笑ってるけどバレーボールはチームゲーム。誰か一人だって欠けちゃダメなんだ。
それをのんは自分のせいで皆に迷惑かけて、だから逃げるなんてダメなんだ。本当に申し訳ない。

「ほら、さっさと宿題終わらせてきなよ」
「保田先生と掃除なんて事になったら部室の掃除も一人でやってもらうからね!」
「ちゃっちゃとやっちゃって早くゲームしましょうよ!」
「おら、早くやって来い!!」

なのに、なんで皆こんなに良い奴。
よっちゃん、よっちゃんがいた時のバレー部だって最高だったけど、今のチーム、それ以上に最高だよ!

カオリンと皆にごめんねとありがとうを繰り返しながら体育館を後にする。
ケメちゃんとの居残りお掃除も嫌だけど、それより何より早く皆とバレーがやりたい。
だから、そのためにはさっさと終わらせないとね。

「ね、亜弥ちゃん!」

「お、ぅお?何いきなり!!」

「えへへぇ〜」

「エヘへじゃないよ馬鹿」

だって見つけちゃったんだもん。
連絡取ろうと思ったら目の前に本人。何てグッドタイミング。

「ねぇ亜弥ちゃん、今日もお願い!」

手を合わせて頼むと亜弥ちゃんはろこつに嫌な顔をしてみせた。むう、なんだよそんなに嫌がらなくても。
のん、昨日の夜頑張って宿題2ページも終わらせたんだよ、2ページ自力で!

「・・・う〜ん、ハーゲンダッツかなぁ・・・」

む?なんですと?
薄く開いた亜弥ちゃんの口から漏れた言葉。
のんの聞き間違いじゃなければとっても高級、のんだって滅多に食べれない高級アイスの名前だったような気が。
もう一回言って?と目で訴えてみるけど亜弥ちゃんは気付かないフリ。
ああ全くいやらしい!のんに言わせるつもりなんでしょう!!

「う゛〜・・・分かったハーゲンダッツ!だからお願い!」

「おう、まかせろ!」

ほらいやらしい。そしてのんは情けない。
でもだってそうでもしないと多分宿題終わらないもんね、しかたないよ。自分に言い聞かせて亜弥ちゃんと帰る帰り道。
一旦着替えて駅に集合。約束をして途中で別れた。

駅に着くと亜弥ちゃんはもう待っていて「遅いよ」と頭を殴られた。痛いよ。
痛いけど亜弥ちゃんの機嫌を損ねるとのんの宿題は終わらないし、終わらなかったらケメちゃんと二人でお掃除。
そんなのは絶対に嫌だから素直にゴメンなさいをして、ちょうどやってきた電車に乗った。