それからのん達はよっちゃんが買ってきてくれたアイスをいっぱい食べて、
だから窓を閉めっぱなしのよっちゃんの部屋も暑さは結構マシになった。
4人でごろんと横になって扇風機のぬるい風を浴びる。あー、なんだかいいなぁこうゆーの。眠くなってきちゃったよ。
ごろんと寝返りを打って、そしてその途端に眠気は吹っ飛んだ。
のんの視界に大きなカバンが飛び込んできたのだ。宿題だ。

「あー!!」

思わず叫んで亜弥ちゃんとよっちゃんと2人から同時に頭を叩かれた。痛いよー。

「うるさいぞ辻」

「何よいきなり」

何だよもう、二人して睨まなくたっていいじゃないか。
口を尖がらすとよっちゃんに頭をぐるんぐるんと回された。

「んで、何だ?」

よっちゃんはうっとおしそうに言って頭を掻いた。何だよそんな顔しなくても。
それに別によっちゃんには関係ないもん。フンだ。

「ねー亜弥ちゃん」

「ん、なぁに?」

「のん、亜弥ちゃんにプレゼントあるって言ったでしょ?」

「あー、言ってたねぇ・・・」

「でしょ?だから、今からあげる。はい」

「いや、いらないわ」

「そんな事言わずに。さぁどーぞ」

「うん、全然欲しくない」

「もらってよ!」

「・・・ひーちゃん、のんちゃんからプレゼントだって。良かったね!」

のんが無理矢理に押し付けたカバンを亜弥ちゃんはよっちゃんに向かって投げつけた。
あ、それいっぱい宿題入ってて重たいのに。

「ふごっ!!?」

よっちゃんは重いカバンを顔面に受けて、変な声を出してバッタリ倒れてしまった。
あーあー、綺麗な顔がひしゃげてなきゃいんだけど。ごしゅーしょー様。

「・・・で、アレ中身は何なの?」

「んー、宿題」

「宿題?何で?何の?」

けげんな顔をして聞いてくる亜弥ちゃんにのんは夏休みの事からベラベラと話してあげてる。
それを亜弥ちゃんはうっとおしそうな顔でフンフンと頷いていたけど、のんが話し終わるとバッタリと寝転んでしまった。

「あ、亜弥ちゃん!そゆーわけで手伝ってよ!のん、ケメちゃんと2人きりは嫌なの」

「やーだよ。それはのんちゃんが自分でやらなきゃでしょ?ケメちゃんと掃除するのだって楽しいよ。多分」

「一人で出来ないから手伝ってほしーの!それに楽しくなんかないよ絶対」

のんは必死でお願いするけど亜弥ちゃんは目をつぶってしまう。
ちくしょうなんだよもう、のんの計画がおじゃんになってしまうじゃないか。
これじゃあケメちゃんと居残りお掃除コースまっしぐらだ。あうあう。

「つーか何だコレ、すげー重いぞ?」

頭の上にはてなマークをいっぱい浮かべてよっちゃんがやっと生き返った。
体を起こしてのんのカバンを漁ってる。散らかすなよー。

「何だ宿題じゃん、まだ終わってねーの?」

「うっさいなぁ、のんだって忙しいの!」

「何が忙しいんだか。こんなもんちゃっちゃとやってバーっと出せばもう終わりじゃん」

よっちゃんは問題集をペラペラめくりながら面倒臭そうに言う。
ちゃっちゃと出来なくてバーっと出来ないから終わらないの!よっちゃんが代わりにやってよ。
のんがそう言おうとしたら「ほれ、さっさとやってしまえ」とよっちゃんに問題集を投げつけられてしまった。
むぅ、よっちゃんはのんの心が読めるのか。そしてよっちゃんもごろりと横になってしまう。あー寝ないでよう。
扇風機の前にはよっちゃんと亜弥ちゃんと後藤さんがごろりんこ。のんだけ起きててなんか寂しい。
皆と一緒にねっころがりたいけど宿題やらなきゃ。でも一人じゃ嫌だよ。
よっちゃんは起きなくてもいいからせめて亜弥ちゃんだけでも起きてほしいなぁ。
なのに亜弥ちゃんったら幸せそうな顔で目を閉じて。くそー、ちょっとムカつく。

「それ、みして?」

ん?
のんが亜弥ちゃんの顔にいたずらしようとしてたら聞こえてきた声。後藤さん。あれ、寝てたんじゃなかったの?
後藤さんはむっくり体を起こしてのんが持ってる問題集を指差してくる。
のんは言われるままに、後藤さんに問題集を渡した。

「のの、コレ全部やらなきゃだめなの?」

後藤さんは問題集をペラペラめくって、全部見終わってから聞いてきた。
のんがうなずくと、後藤さんはニンマリ笑った。

「ごとー、あたまいいよ」

・・・え、本当?

「・・・たぶんね」

あ、さっきのんの心を読んだでしょう。後藤さんはケフンケフンと咳をして、そして立ち上がった。

「あやちゃんと、ひーちゃんがねてる間に終わらせちゃう?」

ん、のんにも手伝えって?
後藤さんは人差し指でのんと後藤さんとをかわりばんこに指差す。

「んあ、だってこれはのののしゅくだい」

・・・そうですよね。のんは後藤さんに頷いた。
それから2人でテーブルに向かい合って座る。お、なんだか楽しくなってきた。
コレならすぐに出来ちゃいそうだ。後藤さんが本当に頭良かったらだけど。
後藤さんを目の前にしてのんは問題集を開いて、鉛筆を握った。