
駅について自転車を止める。もうすぐ亜弥ちゃんが来るはずなんだけどな。
改札からちょっと離れたところで重いカバンを持って亜弥ちゃんを待つ。あ、来た!
「亜弥ちゃん!遅いよー」
「ゴメンゴメン、・・・って、何そのカバン」
「ん、これ?亜弥ちゃんにプレゼントだよ」
「・・・凄く嫌な予感がするんだけど」
「いーからいーから。それより早くいこ、電車来るよ」
水色のTシャツを着た亜弥ちゃんは今日も可愛い。のんのカバンを気にしてるみたいだけどコレはまた後で。
タイミングよくやってきた電車に2人で乗り込んで目指すはよっちゃんち。
ガタゴト電車に揺られて二つ目の駅で降りる。よっちゃんちまでの道はもう完ぺきに覚えてる。
電車を降りて2人でダッシュ。今日は部活に行ってたから時間が惜しいよ。
空はオレンジ。ギラギラだった太陽も今はなんだか柔らかい。
思いカバンのせいでひーひー言いながらよっちゃんちについた。二階の一番はじっこ。
インターフォンをピンポーンと鳴らして、よっちゃんは出てこなかったけれど、勝手にズカズカ上がりこんだ。
「ひーちゃーん!愛しのハニーがやってきたよー!」
「よっちゃーん!スイートスイートハニーの登場だよー!」
「・・・あやちゃん!のの!」
てっきりよっちゃんがいるものだと思ってふざけながら部屋に入ったらそこによっちゃんはいなくて後藤さんが一人でいた。
にこにこ笑ってひらひら手を振ってる。
「ごとーさん!昨日振り!」
「ひーちゃんは?」
後藤さんに会えたのが嬉しくてのんは思わず後藤さんに抱きついた。うはぁ、やっぱりふわふわしてる。
むわむわ暑いのだって気にならないや。
「ひーちゃんは、ちょっとおでかけ」
後藤さんは楽しそうに言った。
おでかけ?何だよ、のん達よっちゃんちに行くよ!って言ったのに。何でお家いないんだ。
後藤さんから離れて亜弥ちゃんとよっちゃんへの文句をぶーたれる。
「しかし暑いね」
「そーですねえ」
「ったく、ひーちゃんのばかやろう、クーラーぐらいつけてほしいよね」
亜弥ちゃんはぶーぶー言いながらどこからか扇風機を引っ張り出してきてスイッチを入れる。
むわぁっとした空気があたって気持ち良いのか悪いのか微妙なトコだ。
2人して扇風機の風に当たってたら後藤さんもやってきた。
あー、あー、扇風機の首が回るたんびに声を出して音を震わせてる。
昨日も同じ事やってたなぁ、楽しいんだろうか。
のんも真似してあーと声を出してみた。おお、中々楽しいね。
それからのんと後藤さんはずっとあーあーと言っていた。亜弥ちゃんは耳を塞いでのんをガシガシ蹴ってくる。
何だよ、亜弥ちゃんもやればいいのに。楽しいよ?
それにしてもよっちゃん遅いな。
のんがそう思うと同時に亜弥ちゃんが「あっつい!!!」と叫んで立ち上がり、それと同時に玄関のドアが開く音がした。
「・・・アレ、何でお前たちがいるんだ」
「よっちゃん!遅いよー」
「どこ行ってたの!」
「ばかー」
「あほ!」
「・・・変態!」
「エロ親父!」
「おほほい、最後の方は言いすぎだろう。コンビニ行ってたの、遅くなって悪かったよ」
よっちゃんは言いながら両手に下げてた白いビニール袋を突き出してくる。ん、なんだ?
「わー!!アイス!さすがよっちゃん大好き!!」
「えー、何で抹茶がないのよ、使えない」
よっちゃんが突き出したビニール袋の中にはアイスが沢山。どうやら抹茶はないみたいだけど。
亜弥ちゃんとよっちゃんがまた言い争いを始めてるけど気にしない。だってよっちゃんより亜弥ちゃんよりアイスアイス。
チョコミントのアイスを探り出してガブリ。んー!!!最高!口の中がひんやり美味しい。
亜弥ちゃんとよっちゃんはまだまだ言い争い中。うるさいなぁもう。
まったく亜弥ちゃんもバカだ、ケンカなんかしてたらもっと暑くなっちゃうじゃないか。さっさとアイス食べちゃえばいいのに。
やっぱりよっちゃんの従姉妹だ。バカコンビだ。
「んー、ひーちゃんとあやちゃんはばか?」
うぉう。
のんがぼーっとよっちゃん達を見てたらいつの間にか後藤さんが隣に来てた。
ちゃっかりストロベリーのアイスを食べちゃってる。
「だってバカだよ、暑いならアイス食べちゃえばいいのに」
のんがそう言うと後藤さんはいきなり立ち上がって自分の持ってたアイスをよっちゃんに「ん」と押し付けた。
そしてのんをグイと引っ張って立ち上がらせると、アイスを持ってた右腕を掴んで亜弥ちゃんの目の前へ。
何するの?と思った瞬間、のんのチョコミントは亜弥ちゃんの口の中。あー!!!
「んは、仲直り?」
後藤さんはのんを見てにこにこにこ。
後藤さんの後ろでよっちゃんは大きな目を更に大きくして、亜弥ちゃんの口にはチョコミントが刺さったまま。
うーん、ちょっと荒っぽいけど静かになったのは間違いないね。
「うん、仲直り!」
のんと後藤さんはニーっと笑って、その後ろでよっちゃんと亜弥ちゃんはまだ固まったままだった。
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