
「どーゆー事?」
「マジでエスパーなのか!?」
「あたしに言われても分かんないよ!」
女の人を一人残してのん達はよっちゃんの寝室にいた。
のんとよっちゃんはドキドキ、ビクビク。亜弥ちゃんはイライラしてる。
もっかいテストしてみよう、と亜弥ちゃんが言った。
「のんちゃんは頭の中で自己紹介、ひーちゃんは眠い、ってずっと思ってて」
「「イェッサ!!!」」
いつの間にかリーダーになっている亜弥ちゃんの命令にのん達はビシッと敬礼をして女の人の前に座った。
まずはのんからだ。よし、私の名前は『辻希美』、『つじのぞみ』。
女の人は大きな目でのんをじっと見てくる。なのでのんもずっと女の人の目を見た。私の名前は辻希美、つじのぞみ。
ずっと目を開いていたので目が乾いてきた。パチクリ。
瞬きをした瞬間、女の人は悲しそうな顔で、ごめんなさい。と言った。
のんはガックリきて、それでもよっちゃんにバトンタッチした。よっちゃんは何だか本当に眠たそうだ。
ちょっともしない内に女の人はよっちゃんに向かって「ねむたいの?」と言った。
よっちゃんは「うわぁ」と言ってのんを見た。そして2人で亜弥ちゃんを見た。
亜弥ちゃんは何かが解ったみたいにふむふむ頷いて、女の人をまた一人残してのん達を連れて寝室に行った。
「解ったよ、あの人はエスパーなんかじゃない」
「はぁ?何言ってんだお前。見てただろう?私が思ってた事ズバっと当てたぞ?」
「そうだよ、のんだってさっきはダメだったけど、その前は当てられちゃったよ?」
「うるさい黙れバカ共。あやや教授の見解を大人しく聞け!!」
亜弥ちゃんにギロッと睨まれてのん達は黙ってしまった。そしてあやや教授のお話が始まった。
いい?人間の目っていうのは言葉以上に本音を語るものなの。
そしてその目の表情っていうのは、皆それぞれ似ていないようで、実は殆どが同じなんだ。
その思ってる事が皆同じだとするよ?そうすると上辺には皆てんでバラバラな事を考えているように見える。
だけど心の奥底、頭の中で思ってる事、その奥の奥の本質は一緒だから実は皆の瞳の奥は同じ表情をしているんだ。
例えば目の青い人、灰色の人、一重の人、男の人、そしてひーちゃんが皆一様に眠いなぁ、と思ったとするでしょ?
そうすると皆全然違う目をしているんだけど、眠いなぁっていう感情、欲求は皆同じな訳よ。
だから全然違う目、人でもその目の奥の表情は皆一緒なの。
だからこれは訓練かなんかすれば分かるようになるものなのね。
実際にコレだけの事で『貴方の将来占います』なんてお金稼いでる人もいるし。簡単なトリックだよ。
将来を占ってもらおうなんて人は大概何かの不安を抱えてて、だから占ってもらおうなんて思うのね。
そんな不安なんてのは自分では隠してるつもりでもその手の人には全部まるっとお見通しな訳よ。
だって全部その目に映ってるんだから。占い師はその目に映っている事をただ言えばいいだけ。
ただそれだけの事なのに、占ってもらってる人はそんな事知らないわけだからこの占い師は凄い!この人の言う事は本当だ!
なんて簡単に騙されちゃうんだよね。何で分かるんですか?ってお前がベラベラ喋ってたからだろ、みたいなね。
話が逸れてきた、まぁ占いなんてズルみたいなもんだよって話。
んで、彼女の事だけど。
あたし言ったよね、のんちゃん、ひーちゃんに自己紹介してって。
だけどそれには答えられなくて、だけど眠たい、だとかお腹が空いた、だとかの欲求はガンガン当てた。
これがどんな事を意味してるかっていうと、あの人はきっと目の表情を読むことが出来る人だっていうこと。
それも人の欲求にかけてはスラスラ分かるんじゃないかな?
けど特別な訓練を受けてきたようには見えないし、小さいころから人の目を気にしながら、伺いながら、ってやってきたのかもしれない。
ひーちゃん達も時々あるでしょ?相手の目を見てさ、あ、この人今コレして欲しそうだな、とかアレやったらきっと喜ぶだろうな、とか。
そういうのと同じだと思うんだよね。ココ大事だよ。〜してほしい、とか〜したい、とか。
そういう欲求、感情をあの人は目を見るだけで分かるんだろうと思う。
逆に自己紹介ってのはそこに欲求やら感情はない訳でしょ?だからあの人も答えられなかったと思うんだよね。
まぁあんた達何言ってるか訳分かんなさそうな顔してるからガツンと結論言うけど、あの人はエスパーなんかじゃないって事。
あー疲れた。てかあたし今超頭イイ人みたいだね!
亜弥ちゃんは満足そうに笑ったけどのんとよっちゃんは全く笑えなかった。
亜弥ちゃんの言ってる事は全くもって意味がプー。少しも理解出来ずに頭からプスプス煙が出てたから。
けどこれだけは分かったよ。
「「つまり、占い師はインチキって事?」」
よっちゃんも分かってたんだ。亜弥ちゃんは言葉もなくガックリとその場に崩れ落ちてしまった。
あやや教授の講義が終わって女の人の所に戻った。その人はまた扇風機に向かってあーあー言って遊んでいた。
何だか可愛い人だ。そこでのんの頭にポンと疑問が浮かんだ。
「ねぇねぇ、エスパーだとか何だとか言ってるけどさ、この人、普通にお話できるんじゃないの?」
ポンと浮かんだのんの疑問によっちゃんと亜弥ちゃんはこの世の終わりみたいな顔をした。
そんな二人を見て女の人は笑った。それにつられてのんも笑ってしまった。
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