
卒業。と告白
「なあ松浦よお」
「なんですか?」
「もうそろそろ卒業シーズンだな」
「そろそろっていうかあと一時間もしない内に卒業式始まりますよ?」
「ヨシザワさん、卒業式を目の前にしてようやく気付いたことがあるよ」
「あら、何か目指すのはもうやめですか?」
「そうだな。目指すのはもうやめた、卒業だ。ヨシザワさんは気付いたんだ。ヨシザワさん、このままでいいんじゃないかってね」
「いやー、そのままでいるのもどうかと思いますけど」
「いいんだ、今までのヨシザワさんは背伸びをしすぎていたよ。だから藤本ミキティは振り向いてくれなかったんだと思うんだ」
「背伸びって言うか空回りですよね、歯車が噛み合ってないと言うか」
「まあそうなのかも知れん。でもヨシザワさんもっと大事なことに気付いたんだ」
「どうせまた下らないことでしょう」
「うん、どうやらヨシザワさん、藤本ミキティの事が大好きなんだけどそれ以上にお前の事が好きかもしれない」
「・・・それ本気ですか?」
「ヨシザワさん嘘言ったことないし」
「それがもう嘘ですよね。で、本当なんですか?」
「どうやら本当みたい」
「それは告白ってやつですか?」
「そうだね」
「いやん、どうしよう」
「どうもしなくていいよ、ヨシザワさんが自分の気持ちに気付いただけの話なんだから」
「え、でも私の事が好きでどうにかしたいとは思わないんですか?」
「うん、まあこのままでいいや」
「ねえ、ヨシザワさん本当にあたしの事好きなんですか?」
「だから好きだって言ってるだろ」
「何で怒るのよぅ」
「怒ってないよ!」
「照れてるんですか?」
「照れてないよ!年上をからかうもんじゃないよ!」
「ごめんなさい」
「ん。じゃあそう言う事だから」
「え。それだけ?」
「これだけだけど?お前は何か用があるのか?」
「いえ、特にありませんけど」
「ならいいだろ。じゃ」
「ちょっと待ってください!」
「なんだよしつこいな、ヨシザワさんにも色々用事があるんですよ?」
「でも、これでお別れなんて寂しすぎます」
「何言ってんだ、いつだって会えるしいいじゃないか、あっさりしてて」
「ヨシザワさんの告白にお返事してませんし」
「返事はいらないよ」
「結局何になるのかも教えてもらってないですし」
「なるようにしかならないよ」
「・・・なんでそう言う事言うんですか」
「え?」
「何でそんな冷たい事言うんですか」
「まつーら」
「何で、何でいつもみたいにヘラヘラ笑ってバカしてくれないんですか」
「いや、だってこのお話ももう最後だし真面目にやっておこうかなって」
「ヨシザワさんの真面目はキモチワルイからやめた方がいいと思います」
「・・・お前さぁ、それ泣きながら言うことじゃないだろ」
「泣いてません!」
「分かった分かった、泣いてないよ。じゃあもうホントに時間ないから」
「ヨシザワさん」
「ミキティと仲良くすんだぞ」
「・・・知ってたんですか?」
「さあね。どうでもいいだろそんな事。それじゃ」
「ヨシザワさん!」
「ん、何?」
「私、ヨシザワさんのことちょっとだけ好きでした!」
「おぉ、ありがと。ヨシザワさんはお前の事いっぱい好きだよ!」
「亜弥ちゃん」
「みぎだん」
「どした、泣いてるの?」
「泣いてない!」
「はいはい、泣いてない、泣いてないね。で、どしたの」
「ヨシザワさんに告白されちゃった」
「わお。で?」
「よくわかんないまま有耶無耶に」
「なんだそりゃ」
「なんなんだろうね。お別れもあっさりしてたし。卒業ってそんなものなの?」
「お別れ?何言ってるの亜弥ちゃん」
「え?」
「よっちゃん単位足りなくて留年するんだよ」
「は?」
「だから亜弥ちゃんともっかい三年生出来るってさっき凄い嬉しそうだったけど」
「え、ちょっと待って、意味が分からない」
「だから、よっちゃんもう一回三年生やるの。亜弥ちゃんと同級生だよ」
「え、みきたんは?」
「何言ってるの、私はちゃんと卒業するよ、留年する方が難しいでしょ」
「え、やだやだ!たんも留年して!」
「やーよぅ何で私が。よっちゃんがいるからいいでしょ」
「ヨシザワさんがいるからヤなの!」
「まぁまぁ。告白されたんでしょ?仲良くやんなよ」
「え、ムリムリ!って言うかさっきあたしなんて言った?ちょっと好きとか言っちゃったし!」
「おお相思相愛じゃん」
「やめて!泣いちゃったし!」
「あらまぁ早速?」
「うわーもうどうしようホント無理っていうかなんで卒業してかないのよバカじゃないのあの人ホント信じらんない!」
「バカなのは亜弥ちゃんよく知ってたじゃない」
「うーひどいよみきたん」
「まあまあ。亜弥ちゃんならダイジョブだって。
これから先のどんな困難も苦難も二人ならきっと乗り越えていけるでしょ、お幸せに!」
「あーやめて!もーやーだああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
おしまい?
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