たのしいこと、なりたいもの、やりたいこと



「なあ松浦よお」

「その前にヨシザワさん」

「なに?」

「この前言ってた事覚えてます?」

「この前?」

「お絵描き交換」

「ああ、アレね」

「みきたんから預かってきました」

「え、うそ、ホント?」

「マジです。目の前で描いてもらいましたから。はい、どーぞ」

「ぅおお!サンキュー松浦お前よくやっ・・・た・・・けど、コレ、何?」

「何だと思います?」

「うんこ」

「ライオンだそうです」

「あ、あ、あぁ、あー、ライオンね、ライオン!ライオンだな、うん、まさしくライオンだよコレは!」

「捨てる時は跡形もなく焼いてしまってって言われました」

「捨てるものか!一生大事にするさ!」

「で、ヨシザワさんのは?」

「あ、ああ、ヨシザワさんのね、あー・・・」

「どうかしましたか?」

「いや、その、何て言うかさ」

「ちょっと待ってください、今気付きましたけど何でジャージ着てるんですか?」

「いやーそのーなんだ、アレだよ、久しぶりにお前とバレーがやりたいなと思って」

「何でジャージ着てるんですか?」

「あの、その、えっと。あーもう、昨日絵描いてたら制服汚れちゃって」

「どんだけ本気だったんですか」

「だってお前アレだぞ、藤本美貴ティにプレゼントしちゃうんだぞ、マジになるだろ」

「みきたんの絵はアレでしたけどね」

「言うな」

「はいはい。それでジャージですか」

「そうなんだ、お家帰ったらお母さんにめっちゃ怒られてヨシザワさん泣きたかったよ!寧ろ泣いたよ!」

「えっと、今いくつですか?」

「18さい」

「なんていうか可哀想ですね」

「だろ?せっかくミキティのためにヨシザワさん一生懸命描いてたのに」

「ジャージは分かりましたけど、それで絵は?」

「あのー、無いの」

「無い?なんで」

「昨日お家持って帰ったらお母さんの餌食に」

「うわ、酷いですね」

「だろ?真っ二つだぜ、こえーよあいこ」

「じゃあ絵はないんですね」

「そうだな。ついでに制服もない」

「それは知りません」

「・・・」

「・・・」

「・・・で、なんだっけ」

「何がですか?」

「ヨシザワさん何を目指したかったんだっけ」

「聞いてませんけど」

「うそ、えー、じゃあどうしよっかなー」

「絵描きでいいんじゃないですか?」

「え、やだよ、だって服汚れるし」

「そんなにあいこさん怖いですか」

「絵描きで食っていくなんてまず到底ムリだし」

「以外とシビアですね」

「あーどうしよ。何になろっかなー。なぁ、何が良いと思う?」

「あたしに聞かないで下さい」

「むぅ、冷たいな」

「自分のなりたいものくらい自分で決めてくださいと言う至極真っ当な意見だと思いますけど」

「・・・おい松浦」

「なんですか」

「バレーボールをしよう」

「でもヨシザワさん引退した人ですし」

「何言ってんだ、一生現役だ!そのためのジャージだ!!」

「はいはい」

「いくぞ!ミサイルサーブ!」

「はいはい」

「ロケットパス!」

「はいはい」

「殺人アターックゥ!!」

「はいはい」

「おい松浦!」

「なんですか?」

「楽しいな!」

「壁打ちが?」

「・・・相手してください」











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