
太陽との距離
「これでもう、本当に離れ離れだね」
私の言葉にごっちんはただ目を伏せた。
いきなり呼び出され何かと思えばとんだ別れ話。
私とじゃない、私達の仲間との別れ。
なんとなく感じていたんだ、今のごっちんの在り方。
これでいいのかな、合っているのかな、模索しているのか。迷っているの?
遠巻きに見ながらそんな事感じていた。
その矢先のこの話だ。
特別驚きもしなかったし若干の衝撃はあったけれどそれだけだった。
だって私とごっちんの関係ってそんなものだ。
二人とも子供じゃない、お互いに甘え合っていた時期はとっくのとうに過ぎていた。
ごっちんの卒業時から段々と広がっていった距離。
意識はしていなかったけど感じていた。
けれどそれを悲しいとは、寂しいとは思わなかった。
だって確かに距離はあったけれど糸はあった。
細くて見えなくて今にも千切れそうだったけど、確かにあったんだ。
けど、それももう無くなってしまうね。
糸もなくなって広がってしまった距離は結局埋められずに離れてしまう。
それだけが少し寂しい。
「本当にそうかな」
「え?」
ごっちんの言葉に顔をあげる。
本当にそうなのかな。ごっちんは同じ言葉をもう一度吐く。
私は黙って次の言葉を待つ。沈黙。
ようやく吐き出されたごっちんの言葉に胸が締め付けられた。
「ごとー、よしこと離れ離れだなんて、今まで一度も思ったことないよ」
その言葉をポツリと落とすごっちんの姿に私はかける言葉が何も見つからなかった。
時が戻ってしまえばいいと思った。なんで今こんなことになっているんだろう。自分を責めた。
苦しい。悔しい。悲しい。寂しい。
いろんな感情が溢れ返って爆発しそうで、でもそれって結局自分の問題だ。
自分がとんでもない大馬鹿者だったっていう話だ。笑えてくる。
「だからね、ごとーはこれからもよしこと離れ離れだなんて絶対に思わないよ」
私はただ顔を伏せて溢れてくる涙を隠すしかなかった。
ありがとう。でもこんな顔じゃ言えないよ。ごめんね。笑っていたいんだけど、笑えないよ。
ごっちんのその真っ直ぐな心が痛い。その槍を防ぐ盾を私は持っていない。持つ必要もないけれど。
喜んでこの体をその槍の前に差し出すよ。
「どれだけ離れてもさ、よしことは絶対どこかで繋がってると思うんだ」
突き倒され貫かれボロボロの体で顔をあげる。
私は上手く笑えているだろうか。ぼやけて見えるごっちんの顔は柔らかな太陽のようだった。
「ありがとう」
その言葉を言うのが精一杯だった。
太陽は私には眩しすぎた。けれど辺りは穏やかな暖かな光に溢れていた。
遠く広がってしまったごっちんとの距離が、ほんの少しだけ近くなったような気がした。
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